電力大手DTEK、東欧最大級のエネルギー貯蔵施設の建設資金調達

(ウクライナ)

キーウ発

2025年06月11日

ウクライナ電力大手DTEKは6月3日、東欧最大級の大型エネルギー貯蔵施設建設に向け、ウクライナの銀行コンソーシアムと30億フリブニャ(約105億円、1フリブニャ=約3.5円)の融資に関して合意したと発表した。融資元はウクライナの国営オシチャド銀行と、第1ウクライナ国際銀行(PUMB、注1)、ウクルガス銀行の3行からなるコンソーシアムだ。銀行からの融資とDTEKの自己資金により、2025年末までの施設建設完了を目指す。

DTEKのマクシム・ティムチェンコ最高経営責任者(CEO)は、同社の投資はウクライナのエネルギーの強靭(きょうじん)性と自立性の確保を目指し、長期的な戦略に貢献するものと強調した。また、単なるエネルギーの復旧だけでなく、国の経済発展の基盤となり、近代的で信頼性の高いエネルギーの創出を目指すと述べた。

DTEKの1月13日発表のプレスリリースによると、同プロジェクトでは、ウクライナに貯蔵施設6基を建設する計画で、フルエンス・エナジー(注2)のバッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)を導入する。この分散型設計により、停電の回避と、従来よりも迅速な電力系統の安定の回復を実現できる。総電力容量は合計200メガワット(MW)で、最大毎時400メガワット(MWh)の電力を貯蔵できる。これにより、60万世帯に2時間分の電力が供給可能で、戦時下の電力供給の維持を図る。

BESSは、太陽光発電や風力発電などで生産された電力をバッテリーに貯蔵し、必要時に供給することで、電力の安定供給を可能にするシステムだ。このシステムの活用により、ウクライナで再生可能エネルギー開発のさらなる拡大が期待される(注3)。

DTEKはポーランド南部で大規模電力貯蔵施設の建設を進める(2024年4月3日記事参照)ほか、ウクライナ南部で風力発電所の拡張工事も進めるなど、クリーンエネルギーへの投資を活発化させている(2025年1月31日記事参照)。

DTEKは日本との関係強化にも力を入れている。同社は4月2日、前駐ウクライナ日本大使の松田邦紀氏を諮問委員会の一員に任命したと発表した。日本企業とのパートバーシップを強化し、環境により優しく、強靭なエネルギーシステムの再構築に期待を寄せている。松田氏は「DTEKが日本のパートナーとより強固な関係を構築できるよう支援したい」と意欲を示した。

(注1)第1ウクライナ国際銀行(PUMB)はDTEKと同様に、ウクライナの企業家リナト・アフメトフ氏が率いるSCMグループの100%子会社。

(注2)ドイツ電機大手シーメンスと米国エネルギー会社AESの子会社。

(注3)ウクライナ政府は2024年8月13日、「2030年までの再生可能エネルギーに関する国家行動計画」を承認。2030年までに、最終エネルギー総消費量に占める再生可能エネルギーの割合を27%まで引き上げることを明示している。

(坂口良平)

(ウクライナ)

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