マルコス・フィリピン大統領、中間選挙受けて内閣改造

(フィリピン)

マニラ発

2025年06月04日

フィリピンのフェルディナンド・マルコス大統領は522日、全閣僚の辞任を要求した。「職務遂行能力や、連携、緊急性を重視した再編と再調整のため」とし、大統領は今後、各省庁の成果を評価し、大臣の留任または交代を決定する。これまでに辞表を提出した52人の閣僚のうち、6人の留任、2人の交代、6人の異動が決定している。 

交代が決定したのは、アントニオ・ラグダメオ国連常駐代表と、マリア・アントニア・ユーロ・ロイザガ環境天然資源相だ。ラグダメオ氏は731日付で退任し、後任にはエンリケ・マナロ外相が81日付で就任する。マナロ氏の後任には、外務次官のテス・ラザロ氏が就任する。ロイザガ氏の後任には、ラファエル・ロティージャ・エネルギー相が就任し、その後任はシャロン・ガリン次官が暫定的に務める。 

一方、ルーカス・ベルサミン官房長官、クリスティーナ・ロケ貿易産業相、ラルフ・レクト財務相、アルセニオ・バリサカン経済企画開発相、アミーナ・パンガンダーマン予算管理相、フレデリック・ゴー投資・経済担当大統領特別補佐官などの経済閣僚は留任が決定した。ホセ・アクザル定住地都市開発相はパシッグ川開発の大統領顧問に任命された。後任には元次官のホセ・ラモン・アリリング氏が就任する。 

528日には全政府系企業(GOCC)にも、辞任指示が出された。これを受け、フィリピン娯楽賭博公社(PAGCOR)、フィリピン土地銀行(LBP)などのトップが辞任した。国家警察(PNP)については、ロンメル・マルビル長官の後任として、ニコラス・トーレ氏が就任することが発表された。 

現地の経済学者やアナリストは「今回の内閣改造は、就任以来行っている貧困対策などの主要経済分野の取り組みの低迷に対する国民の不満の高まりへの対応」とみている。また、この動きによって、マルコス政権が優先事項や政策を見直す可能性がある一方で、既存のプロジェクトへの懸念も高まっている。一方、アテネオ・デ・マニラ大学の経済学者レオナルド・ランソナ氏は、中間選挙でのマルコス大統領擁立の上院議員候補の不振を受け、「政府改造案は当然の対応だ」と述べた。 

フィリピンの中間選挙は512日に行われ、17日に結果が発表された。今回の選挙で18,280のポストが決定するほか、12議席を争った上院選については、サラ・ドゥテルテ副大統領の弾劾裁判の結果(注)に関わるため、特に注目されていた。新たに上院議員に選出された12人のうち5人がマルコス大統領支持派、5人がドゥテルテ副大統領支持派、残りの2人はリベラル派の野党候補だった。 


(注)ドゥテルテ副大統領は汚職とマルコス大統領暗殺計画の容疑で、弾劾裁判が6月に開始される予定。ドゥテルテ副大統領が無罪となるには、24人の上院議員のうち3分の1以上となる合計9票の同意が必要となる。 

(西岡絵里奈、アギラー・パールホープ)

(フィリピン)

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