好況のドイツ航空宇宙産業、エアバスが大きく貢献、防衛分野のビジネスにも期待の声
(ドイツ)
ベルリン発
2025年06月04日
ドイツ航空宇宙産業連盟(BDLI)は5月22日、ドイツ航空宇宙業界の2024年の売上高を発表した(プレスリリース、ドイツ語)。同年の売上高は520億ユーロで、前年比13%増加し、国内の不況にもかかわらず、同産業が継続的な成長を続けていることを明らかにした。
民間航空の売り上げが390億ユーロで、前年比18%増と大きく増加したことが全体の売上増に大きく貢献した。一方、軍事航空(100億ユーロ)、宇宙(30億ユーロ)の売り上げは横ばいだった。
現地経済紙「ハンデルスブラット」(5月23日)によると、民間航空の売上増の牽引役はエアバスで、特にハンブルクで製造されるA320シリーズが好調だったことから、ドイツのサプライチェーンもその恩恵を受けたという。しかし、航空宇宙産業がエアバスの売り上げに大きく依存していることには懸念の声もあり、依存脱却のために防衛分野のビジネスに期待を寄せる企業が多い。同紙はまた、宇宙分野は横ばいだったものの、3月に小型試験ロケットを打ち上げたイザール・エアロスペース(2025年4月7日記事参照)に代表される宇宙関連のスタートアップなどが業界を活性化させていると指摘した。
BDLIのミヒャエル・シェルホルン会長は、航空宇宙産業は既に先行投資を行っており、今後は政府が積極的にイニシアチブをとり、防衛力強化のための特別予算の活用(2025年3月24日記事参照)や、欧州宇宙機関(ESA)との宇宙開発での緊密な協力、航空研究へのコミットメントなど、積極的な役割を果たしていくべきだとして、政治に対する期待を明らかにした。また、メディアの取材に対しては、一貫した欧州製品優先購入(Buy European)戦略は企業だけではなく、ドイツ全体にとっても有益で、これを実践して産業的付加価値と技術的自律性を強化していくべきだと語った(「フランクフルター・アルゲマイネ」紙5月22日)。
(打越花子)
(ドイツ)
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