米ニューヨーク市長民主党予備選、マムダニ氏が勝利
(米国)
ニューヨーク発
2025年06月27日
米国ニューヨーク(NY)市では6月24日、11月に予定されている市長選挙本選に向けて民主党内の候補者を選ぶ予備選挙が行われ、NY州議会議員(現職)のゾーラン・マムダニ氏が勝利した。投票用紙に記載された候補者は11人で、そのうち、同氏と、2010~2021年にNY州知事を務めたアンドリュー・クオモ氏(2021年8月11日記事参照)が有力候補と目され、開票率約96%時点でそれぞれ43.51%、36.42%の得票率で他候補を大きく引き離していた。NY市の選挙は「優先順位付き投票」(注)で行われるため、集計結果次第では落選候補の票がクオモ氏に配分され、逆転できる可能性も残されていたものの、クオモ氏は24日夜に敗戦を表明し、マムダニ氏の当選が確定した。
マムダニ氏が重要課題として上位に挙げる政策には、住居(家賃規制付きアパートに関する賃料引き上げの凍結など)、公共の安全(警察・社会保障が一体となった暴力の未然防止対策など)、生活費高騰への対応(公営食料品店の開設、市営の無料バスの導入など)に関するものに加え、移民を守る聖域都市としての体制強化などが含まれており、クオモ氏と比較してよりリベラルな政策が目立つ。そのため同氏は、民主党内のバーニー・サンダース上院議員(バーモント州)や、レティシア・ジェームズNY州司法長官、2021年の市長選で落選したマヤ・ワイリー氏などから支持を受けた。また、今回の予備選挙で得票率11.3%の3位となった、NY市のブラッド・ランダー会計監査官も、マムダニ氏への支持を表明した。
インド系米国人のマムダニ氏は、イスラム教徒でもあり、過去に反イスラエル主義の発言をしたと対立陣営から批判されたが、最終的には、選挙結果を覆すほどの影響は与えなかった。パレスチナを支持するユダヤ人団体のジューイッシュ・ボイス・フォー・ピース・アクション、ユダヤ人による人種的・経済的正義を推進する団体の選挙部門のザ・ジューイッシュ・ボートはマムダニ氏を支持する一方、米国ユダヤ人委員会、メトロポリタン・ユダヤ人貧困対策協議会、ファー・ロッカウェイ・ユダヤ人同盟などの組織の指導者たちは、マムダニ氏に対して不支持を表明するなど、ユダヤ人団体でも反応がわかれた(政治専門誌「ポリティコ」6月22日)。
今回の結果を受けて、マムダニ氏が民主党候補としてNY市長選を戦うこととなるが、今後の動向が注目される候補としては、現職のエリック・アダムス市長や共和党候補のカーティス・スリワ氏などがいる。アダムス氏は当初、民主党で立候補していたが、2025年4月に民主党で立候補することを辞退し、無所属で本選挙に臨むと発言した。共和党では、候補者が前回2021年の予備選でも勝利したスリワ氏1人のみだったため予備選は行われず、同氏が共和党候補となっている。また、今回の予備選で敗れたクオモ氏の動向にも注目だ。同氏は24日夜、記者に対し、優先順位集計の結果を参考にした上で無所属として11月の本選挙に立候補するか検討すると述べた(「ニューヨーク・タイムズ紙」電子版6月25日)。
(注)NY市では、2021年に初めて導入された。有権者は、候補者の中から最大5人に1~5番の優先順位を付けて投票し、1回目の集計で1番の得票数が有効投票数の過半数に達していない場合、得票数の最も少ない候補者が落選する。2回目の集計では、落選した候補者を1番として投票した有権者の票は、当該有権者が2番を選んだ候補者へ割り振られる。これが繰り返され、最終的に過半数の得票数を獲得した候補者が当選する。
(吉田奈津絵)
(米国)
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