英政府、サイズウェルC原子力発電所に最大55億ポンドの支援発表

(英国)

ロンドン発

2024年09月12日

英国政府は8月30日、建設計画中のサイズウェルC原子力発電所に対して、最終投資決定(FID)までの開発費(DEVEX)を支援する最大55億ポンド(約1兆175億円、1ポンド=約185円)の補助金制度外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。具体的には、FIDに達するまでの継続的な設計作業や、サイト準備、サプライチェーンへの発注、従業員の能力開発などに充てられる。この発表は、競争市場庁(CMA)による同補助金制度の「2022年補助金管理法」への適合性評価(注1)の結果公表を受けたもの。CMAの報告書では、同補助金制度がなければ、同原子力発電所をFIDまで導くために必要な規模のDEVEXを調達することはできないと評価していた。

サイズウェルC原子力発電所は、英東部サフォーク州サイズウェルで、フランス電力(EDF)が計画する原子力発電所。容量は3.2ギガワット(GW)で、600万世帯相当に電力を供給する予定。ガス火力発電所と比べ、年間約900万トンの二酸化炭素(CO2)排出量を削減できる。同発電所は、低コストで低炭素電力を供給するとともに、電力の安定供給とエネルギーシステムの安定性に貢献することから、英国のネットゼロおよびエネルギー安全保障政策で重要な役割を果たすとされている。

資金面では、政府からこれまで合計約25億ポンドの公的資金が拠出されている。また、同発電所は、英国初となる規制資産ベース(RAB)モデルと呼ばれる新たな手法で資金調達を行う。このモデルは、まだ稼働していない原子力発電所の建設費や維持費などを電気料金に上乗せして回収する手法。現在建設中のヒンクリーポイントC原子力発電所は、差額決済契約制度(CfD)(注2)によって稼働後に政府支援を受けられるのに対して、サイズウェルCは、RABモデルにより、建設段階からコストを回収して事業者のリスクを低減できると見込まれている。

政府は2024年末までの同発電所のFIDを目指している。

(注1)国や自治政府、地方自治体による現金給付や低利融資、保証などの公的援助を規制するもの。リスクが大きいと判断する補助金にはより詳細な評価を求め、CMA内の「補助金助言ユニット」の評価と助言を要請できる。特に歪曲(わいきょく)リスクが大きい補助金などは、同ユニットの評価・助言が必須となる。

(注2)発電事業者の投資リスクを減らすため、対象となる電源の固定価格(ストライクプライス)と市場価格の間の変動する差額を政府が補填(ほてん)する制度。

(奈良陽一)

(英国)

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