第9回ビバ・テクノロジー、西アフリカ各国が積極参加
(フランス、ナイジェリア、コートジボワール、チュニジア)
パリ発
2025年06月20日
イノベーションとスタートアップの欧州最大級の展示会「ビバ・テクノロジー2025」が6月11~14日にパリで開催された。主催者発表によると、第9回の今回は世界中から過去最多の18万人を超える来場者と、1万4,000 社を超えるスタートアップ、3,600社を超える投資家や投資ファンド参加した。
ビバ・テクノロジーの会場(ジェトロ撮影)
今回のビバ・テクノロジーへのアフリカ発スタートアップの参加状況は、主催者が招待した9社で構成する「アフリカテック」のほかに、西アフリカ諸国の積極的な参加と関係省庁などによるブースが目を引いた。アフリカ勢の中で出遅れた感が強かったフランス語圏西アフリカ諸国も近年、エコシステムの充実により、多くのテック系スタートアップが台頭し、資金調達に成功している(2024年8月8日付地域・分析レポート参照)。コートジボワール、セネガルはそれぞれ約20社のスタートアップが参加し、初参加のギニアもブースを構え、通信、デジタル経済部門でのパートナー探しを行った。西アフリカでも英語圏のナイジェリアが20社以上のスタートアップを率いて初参加し、アフリカのスタートアップ大国(2025年1月24日記事参照)として存在感を示した。通信インフラをアフリカや南米で展開するIHS、人工知能(AI)搭載の在庫管理システムでナイジェリア、ケニア、エチオピアで病院やケアセンターの医療用品へのアクセスを容易にする「ライフバンク」などのAI使用のヘルステック、エドテック(Education Technology)、フィンテック、ディープテック(注)など、ナイジェリアの参加分野は多岐にわたった。
コートジボワールのブース(左)、ナイジェリアのブース(右)(ともにジェトロ撮影)
AIが主要テーマの1つだった今回のビバ・テクノロジーで、コートジボワールの環境テックスタートアップ「デジタル・スマート・トラッシュ」は、アフリカの都市の巨大化を背景にごみ処理が死活問題になる中、AIを搭載したスマートゴミ箱を開発した。ごみ選別の徹底や衛生状態の改善とともに、ごみ回収の効率化により、省エネと排気ガスの削減を目指す。共同創設者のテノン・クリバリ氏は「アフリカは世界のごみ箱と言われてきたが、若者が人口の大半を占めるアフリカはテクノロジー志向が強く、環境分野でアフリカが先を行くのも夢ではない」とし、欧州やアフリカ諸国の企業から引き合いがあったとインタビューに答えた。
デジタル・スマート・トラッシュのクリバリ氏(ジェトロ撮影)
チュニジアのスタートアップ「キュミュリュス・ウオーター」は、空気中の湿気を飲料水に変換する太陽光発電デバイスを開発している。電力網から離れた場所で、水を運ぶ際に発生するプラスチック、コスト、物流を削減することを目指す(2023年9月22日付地域・分析レポート参照)。
キュミュリュス・ウオーター(ジェトロ撮影)
これらの環境テック・アフリカスタートアップは、日本企業に対し、技術や生産上のパートナーシップを求めるほか、日本企業のCSR活動の一環としての投資にも期待すると述べた。
(注)社会課題の解決を目指す科学的発見に基づく革新的な技術
(渡辺智子)
(フランス、ナイジェリア、コートジボワール、チュニジア)
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