トランプ米大統領、TikTok規制法の執行を再延期する大統領令を発令、2025年9月まで
(米国、中国)
ニューヨーク発
2025年06月23日
米国のドナルド・トランプ大統領は6月19日、中国発の動画共有アプリ「TikTok」規制法の執行開始を延期する大統領令を発令した。執行の延期は2025年1月および4月に続いて3回目となる。
2024年4月に成立、2025年1月に施行した「外国敵対勢力が管理するアプリから米国人を保護する法」は、敵対国(注1)に本社や主要な事業所を有する企業が運営するアプリや、敵対国の外国人が直接的・間接的に所有する企業が運営するアプリなどを対象に、米国での提供、維持、更新を禁止する。ただし、敵対国の企業などによる運営から適切に分割(qualified divestiture)されれば、アプリサービスの提供などは引き続き認める。同法では対象アプリとして、TikTokと親会社の中国のバイトダンスを明示している(2024年4月25日記事参照)。
トランプ大統領は2025年1月に、同氏の大統領就任直前に同法が施行したことを受け、同法の影響を自身が評価できていないことなどを理由に、4月まで同法の執行開始を延期する大統領令を発令した(2025年1月22日記事参照)。また、4月には、6月まで執行開始を延期する大統領令を発令した(大統領令14258号)。今回の大統領令で、執行開始をさらに延期し、司法長官に対し、9月17日まで同法の執行に関するいかなる措置も講じないよう指示した。
米国シンクタンクのブルッキングス研究所のノンレジデント・シニアフェローのアラン・ローゼンシュタイン氏は6月20日に論考を公表し、「TikTokは法律で禁止されながらも、大統領令で急成長するという、奇妙な法的状況の重ね合わせのなかで存在し、生き続けただけでなく、繁栄を成し遂げた。これはまさに『シュレディンガーの TikTok』と呼ぶべき状況だ(注2)」と述べた。
(注1)合衆国法典第10編第4872条(d)(2)で指定される中国、ロシア、イラン、北朝鮮の4カ国。
(注2)量子物理学分野の思考実験「シュレディンガーの猫」より、相反する状況が同時に存在することの例え。
(葛西泰介)
(米国、中国)
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