輸出自動通知(AAE)に関するFAQを公開、バーチャル輸出は対象外
(メキシコ)
調査部米州課
2025年06月23日
メキシコ経済省は6月18日、国家貿易情報システム(SNICE)において、エンジン部品や電気モーター部品、ワイヤーハーネスや医療機器など30品目の輸出に際して7月7日から義務化される輸出自動通知(AAE、2025年6月6日記事参照)について、よくある質問と回答(FAQ)を公開した。FAQをみると、主に次の2点が明確になった。
(1)AAEの対象となる「輸出」とは、6月3日付省令の第2条に基づき、「メキシコの領土から外に出る取引」を指し、輸出向け製造・マキラドーラ・サービス業振興プログラム(IMMEX、注1)を利用する企業などが行う「V1」申告などの「バーチャル輸出申告」(注2)は対象外。なお、IMMEX企業であっても、最終的に国外の顧客に製品を輸出する場合に行う「RT」申告はAAEの対象となる。
(2)実際の輸出申告においては、2025年の貿易に関する一般規則(RGCE2025)の別添22に基づき、商品ごとの非関税規制(RRNA)の関連コードとして「輸出許可」を意味する「C6」のコードを入力する必要があり、経済省に対して通知を行った後10日以内に経済省から送られてくるとみられる承認文書の番号や認証コードを入力する必要がある(注3)。
(1)について、例えば、IMMEXプログラムを活用してAAEの対象となるモーターコア(HS8503.00.99)をメキシコで製造している企業が、在メキシコのモーターメーカーにバーチャル輸出(「V1」申告)した場合はAAEの対象外だが、在米のモーターメーカーに輸出(「RT」申告)した場合は対象となる。(2)について、RRNA対象品目の場合は、同申告欄に適切な申告コード(AAEの場合は「C6」)と承認文書番号などが入力されていないと輸出入が許可されない。そのため、余裕をもってAAEの通知を行い、輸出に先立ち経済省の承認を得ておく必要がある。
対米通商交渉をにらんだ情報収集が目的か
AAEの目的は、対象品目のメキシコからの輸出について、リアルタイムで詳細な情報を把握することだ。これらの情報は、国産化率向上に向けた産業政策、アンダーバリューや迂回貿易の防止などの通商政策に用いられるとみられている。AAEの中で経済省に対して通知しなければならない情報の中には、鋼材や鉄鋼製品を用いた構成部品の原産国や価格構成比、メキシコ産鋼材の利用比率などの情報(注4)も含まれているため、現在行われている対米通商交渉を視野にいれた情報収集が目的と指摘する識者もいる。
進出日系企業がメキシコで製造しており、AAEの対象になる品目としては、エンジン部品(HS8409.91.01)、エンジンの吸気用フィルタ(8421.32.01)、電気モーター部品(モーターコア、8503.00.99)、ヘッドランプ(8512.20.99)、ワイヤーハーネス(8544.30.99)、自動車用自動調整機器(9032.89.99)、自動車用シート部品(9401.99.99)などがある。これらの製品を製造し、輸出する企業は、SNICEの専用サイトに掲載された公報や今回のFAQなどを参照し、6月30日に受付が開始されるAAEの申請に備える必要がある。
(注1)製品やサービスの輸出を条件に、当該オペレーションに必要な部品・原材料、機械設備の一時輸入(保税輸入)を認めるプログラム。
(注2)IMMEXプログラムなど一時輸入プログラムを利用している企業が、同種のプログラムを利用している他社に対して自社の保税在庫を販売、あるいは移転する場合、移転元の企業にとっては「輸出」したと同様の扱いとなる。これを「バーチャル輸出」と呼ぶ。「バーチャル輸出」であっても輸出申告が必要だが、通常の確定輸出申告(「A1」申告)とは異なる「V1」や「V5」などの申告コードを用いる。
(注3)メキシコに非関税規制(RRNA)対象品目を輸入する、またはRRNA対象品目を輸出する場合、登録通関⼠が申告書の商品情報記載欄(Nivel Partida)のRRNA⼊⼒欄に、⾮関税規制コード(Clave)と許可証の番号、承認コード(Firma de Descargo)、価格(ドル建て)、数量を⼊⼒する必要がある。
(注4)鉄鋼や鉄鋼製品を用いたコンポーネントのHSコード、鋼材の原産国(中間材料であるスラブやビレットの鋳造を行った国)、製品輸出価格に占める鋼材の価格の構成比、製品輸出価格に占めるメキシコ産鋼材の価格構成比。
(中畑貴雄)
(メキシコ)
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