ミャンマー、FATF行動要請対象の高リスク国が継続
(ミャンマー)
調査部アジア大洋州課
2025年06月19日
OECDの金融活動作業部会(FATF、注)は2025年6月13日、資金洗浄、テロ資金供与および拡散金融の対策体制に重大な戦略上の欠陥を有する国・地域に係る声明(行動要請対象の高リスク国・地域)を発表し、ミャンマーは引き続き対象国として掲載された。同声明は対外的に「ブラックリスト」とも呼ばれる。
FATFは2022年10月、加盟国に対し、ミャンマーとの取引に際して、リスクに見合ったデューディリジェンス措置を実施・強化するよう通達している(2022年10月27日記事参照)。FATFは、金融機関が強化されたデューディリジェンスの一環として、ミャンマーにかかわる取引や活動について異常または疑わしい点があるかどうかを判断するため、取引先との関係の監視の度合いと内容を強化するよう求めている。
今回の声明では、過去5年間(注2)、FATFの行動計画に対する進展が限定的であることを踏まえ、次の事項に緊急に取り組むべきとしている。
- 法執行機関による捜査における金融情報の活用強化、金融情報部門(FIU)による分析と情報の配信増加を示すこと
- マネーロンダリングのリスクに応じた捜査・起訴をすること
- 越境マネーロンダリングの捜査について、国際協力の活用を示すこと
- 犯罪で得た収益やそれに等しい価値の資産の凍結・押収、没収の増加を示すこと
- 押収資産が没収されるまでの間、その資産の価値を保護するために管理をすること
ミャンマーは、行動計画が完了するまで、行動要請の対象国リストに残り、2025年10月までに行動計画に対しさらなる進展が見られない場合、FATFは対抗措置を検討するとしている。
このほかに、声明では、ミャンマーにおける地震救援活動も念頭に、強化されたデューディリジェンスの実施がNPOや市民の活動、人道支援の遂行に過大な影響を与えないこと、不当に妨げないことの重要性を示した。またFATFは、ミャンマーの資金洗浄・テロ資金供与対策活動が正当な資金の流れに不当な審査を課していないかどうかを継続的に監視するとしている。
(注1)1989年7月のG7アルシュ・サミット経済宣言を受け、「銀行と金融機関が資金の洗浄(マネーロンダリング)のために利用されることを防止」するための検討を行う目的で発足。その後、役割が拡大され、現在ではマネーロンダリング対策、テロ資金供与対策、大量破壊兵器の拡散に対する金融対策などの国際的な取り組みの促進を担っているほか、G20の要請を受け、腐敗対策に資する活動にも取り組んでいる。現在のメンバーは,OECD加盟国を中心とした38カ国・地域、2機関。定期会合が年に3回(10月、2月、6月)開催され、終了後に声明を発表している。
(注2)ミャンマーは、2020年2月に強化モニタリング対象国に指定され、2022年10月に行動要請対象の高リスク国に指定された。
(アジア大洋州課)
(ミャンマー)
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