鉄鋼大手フェストアルピーネ、BYDに鋼板を提供
(オーストリア、ハンガリー、中国)
ウィーン発
2025年06月27日
オーストリアの鉄鋼大手フェストアルピーネは、中国の電気自動車(EV)大手の比亜迪(BYD)のハンガリー工場に鋼板を提供することで合意した。6月24日のウィーンでの記者会見で、フェストアルピーネのヘルベルト・アイベンシュタイナー社長とBYDのステラ・リー(李柯)副社長によって発表された。
BYDは2023年12月に、ハンガリー南東部の都市セゲドで欧州初のEV組立工場を建設すると発表した(2024年1月4日記事参照)。目的は欧州域内において欧州市場のためのEVを生産することで、稼働は2025年末に予定されている。
フェストアルピーネとの調達契約は、BYDの現地化戦略の重要な一歩とみられている。現在、BYDは欧州の部品調達候補の企業数百社と交渉を進めている。リー副社長は「BYDは、欧州に拠点を置き、生産を行うために進出したことを常に明確にしてきた。私たちの欧州市場へのコミットメントは持続可能であり、単なる自動車販売にとどまらない。私たちは長期的なビジョンを追求し、今後5年以内に消費者から欧州のメーカーとして認識されることを目指している。ハンガリーの工場は当然のことながら、このプロセスの中核を担うため、発表する現地サプライヤーの1つ1つが重要な一歩となる」と述べた。
続いて、フェストアルピーネのアイベンシュタイナー社長は「弊社は、高品質な鋼材製品を提供しており、世界の自動車産業にとって重要なパートナーである。今秋からは、リンツ拠点から欧州に生産拠点を持つ中国のテクノロジー企業BYDへの供給を開始する予定だ。車体および外板用の高品質鋼板の生産における今回の初受注は、両社の長期的な協業の基盤となると確信している」と加えた。
BYDのオーストリアでのマーケットシェアは大幅に拡大している。2024年の新車登録台数は3,946台でシェアは1.6%だったが、今回のBYDの発表によると、2.5%に上昇しているという。EVのみのシェアでみると、2025年1~5月はBYDが9.2%で、BMW(13.0%)とフォルクスワーゲン(11.6%)に続いて3位となった。BYDは、個人のEV購入者に限るとBYDのシェアは15%で1位だとした。EVの普及を促進させるために、BYDはオーストリアをV2H(vehicle to home:EVのバッテリーに蓄えられた電力を家庭に供給する仕組み)の試験市場にすることを計画している。オーストリアでは太陽光パネルを利用する家庭が多いため、V2H装置への関心が高い。同計画の内容とスケジュールは、近い将来に発表されるとしている。
(エッカート・デアシュミット)
(オーストリア、ハンガリー、中国)
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