ボリッチ大統領最後の教書演説、経済界は経済政策の不足を指摘

(チリ)

調査部米州課

2025年06月04日

チリのガブリエル・ボリッチ大統領は6月1日、教書演説を実施した。2026年3月に退任予定(注)のボリッチ大統領にとって、最後の教書演説となった。演説では、治安対策、社会保障、経済成長、人権保護と民主主義の分野での政府の功績を紹介するとともに、今後推進する施策として37の項目を掲げた。

経済面での功績としては、インフレの抑制、規制緩和、賃金上昇と家計債務の減少などを挙げた。一方で、今後実施予定の経済関連の施策として、許認可システムの改革を取り上げた。投資促進を目的に、より迅速で簡素かつ透明性の高い許認可システム構築のための改革案が数週間以内に承認される予定で、これが承認されれば処理時間が30~70%短縮される見込みとなっている。また、国家リチウム戦略(2023年4月28日記事参照)のさらなる推進についても触れられた。塩湖における環境保護比率を8%から30%に引き上げ、地域社会と連携しながら、リチウム開発を実行していく意向を示した。

今回の教書演説について、経済界やエコノミストは経済を活性化させるための力強い政策の発表が不足しているとして、批判的なコメントをしている。生産商工連合(CPC)のスサナ・ヒメネス会長は「労働市場の弱体化と投資の停滞に直面しているため、雇用創出に関連したより強力な措置と投資プロジェクトの加速化を期待していた」と述べた。製造業振興協会(SOFOFA)のロサリオ・ナバロ会長は政府に対し、投資の再活性化、経済活性化、質の高い雇用創出のための具体的な措置へつなげるよう求めた。

政権最終盤に入りつつあるボリッチ大統領が、残りの在任期間でどれだけ経済政策を進められるか注目される。

(注)チリでは大統領の連続再選は認められていない。

(佐藤輝美)

(チリ)

ビジネス短信 7df3d765b3ab1de4