ファーウェイと江淮汽車、共同開発の新型EV高級セダン「尊界S800」発売を発表
(中国)
上海発
2025年06月12日
中国の通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)と、安徽省合肥市の大手自動車メーカー江淮汽車は5月30日、共同開発した電気自動車(EV)の高級セダン「MAEXTRO尊界S800」の発売を発表した。
江淮汽車によると、2024年12月に同社とファーウェイが共同建設した「尊界スーパー工場」が稼働を開始し、尊界を製造するシステムを完全に確立した。また、上海市に所在する尊界用のデザインセンターは5,000人余りの専門チームで編成しており、同ブランド製造までの総投資額は100億元(約2,000億円、1元=約20円)を超えた。
尊界S800には世界で初となる「途霊龍行プラットフォーム(TULING LONGXING)」を搭載しているが、これはファーウェイが開発した自律型インテリジェント・デジタルシャーシ(注1)だ。独自開発のアーキテクチャにより、車体制御・パワートレイン・サスペンション、ステアリング、ブレーキなどの車載システムを全て統合した。さらに、インテリジェント・自動運転システム(ADS)を搭載し、関連ネットワークと接続することで、レイテンシー(注2)は1ミリ秒以下になり、情報処理能力は既存の10倍向上したという。
また、尊界S800のデュアルモーター(注3)は、0から100キロ/時までの加速時間が4.3秒、レンジエクステンダー(航続距離を伸ばすための装置)は3つのモーターで構成しており、0から100キロ/時までの加速時間は4.7秒となっている。さらに、4つのキャリパーピストン(ディスクブレーキのパーツの1つ)と電動・油圧ブレーキシステムを組み合わせており、100キロ/時の速度で走行した場合の制動距離は34.5メートルを達成した。
安全面に関しては、「時空予測サスペンション」を採用することで、状態が悪い路面やカーブの事前予測を実現した。ほかにも、インテリジェント・タイヤバースト安定制御アシストにより、緊急時の急速な回避が可能となった。ファーウェイのADS 4.0も搭載しており、次世代WEWAアーキテクチャにより反応速度が向上し、よりスムーズな車線変更も可能だ。また、全方位立体融合感知システムに計36のセンサーを搭載している。クラウドAI(人工知能)技術「ワールドエンジン」で複雑なシナリオデータを生成し、車載の行動モデルと連携させることで、まるで人間のような自然な運転体験を提供する。
(注1)自動車業界のデジタルシャーシとは、車体のABS、ESP、エンジン制御などの制御システムを統合する技術や仕組み、または、車両のネットワーク化や、インターネットへの接続を可能にするための基盤技術を指す。
(注2)レイテンシーとは、データ転送の指標の1つで、転送要求を出してから実際にデータが送られてくるまでに生じる通信の遅延時間を指す。
(注3)デュアルモーターとは、EVに使われる駆動方式で、2つのモーターを搭載し、それぞれのモーターで前輪と後輪を駆動させる仕組みを指す。
(陳貝蓓)
(中国)
ビジネス短信 799f06a9977145fb