2025/2026年度予算案、企業誘致などに重点、財政負担は抑制

(ニュージーランド)

シドニー発

2025年06月05日

ニュージーランドのニコラ・ウィリス財務相は5月22日、2025/2026年度(2025年7月~2026年6月)予算案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。企業投資や外国投資の誘致による経済成長に重点を置くとともに、キウイセーバー(KiwiSaver:確定給付年金制度、注1)の大幅な見直しを打ち出した。ウィリス財務相は経済と財政の回復を確実にし、国民の将来が豊かになるような改革を行うと説明した。一方、予算額の合計は、過去10年間で最低水準の13億3,800万ニュージーランド・ドル(約1,164億円、NZドル、1NZドル=約87円、注2)に抑えた。

ビジネス関係では、企業の投資促進策に対して16億6,000万NZドルを拠出する。具体的には、機械・設備投資を行う企業に対して法人税の税制優遇措置を新たに設ける。また、海外からの投資を呼び込むため投資誘致機関であるニュージーランド投資庁(Invest New Zealand)の設立に21万NZドル拠出する。また、国内経済活性化のため、首相のもとに科学イノベーション・技術諮問委員会を設置するなど科学イノベーション技術改革の実施、ニュージーランドで撮影する映画製作会社に対する補助金の増額などを発表した。他に、防衛・対外関係予算として4億7,700万NZドルを拠出し、防衛装備の強化、太平洋島しょ国への対外援助、輸出額倍増目標の達成に向けた非関税障壁の撤廃、アジア(インド、シンガポールやその他東南アジア諸国)との関係強化などを進める。

国内対策では、老後の資金や国民の住宅購入を支援するため、KiwiSaverの従業員および雇用主の拠出金負担率を2026年4月1日以降、現在の3%から4%へ段階的に引き上げる。政府拠出金の対象年齢の下限は現在の18歳から2025年7月1日以降16歳に拡大する一方、財政への負担を抑えるため、政府の拠出金負担率を半減する。生活費負担軽減策は、必要な世帯に絞った支援となった。子育て家庭(低中所得世帯)に対しては、生活費補助を行う制度「ワーキング・フォー・ファミリーズ」において補助額を増額する。

財務省は、今後の経済見通しについて、実質GDP成長率は、2025/2026年度に2.9%、2026/2027年度には3%に上昇すると予測した。ウィリス財務相は財政見通しについて、短期的には赤字が拡大するものの徐々に改善し、2028/2029年度までに2億NZドルの黒字に回復すると予測した。

ACT党首のシーモア規制担当相が副首相に就任

5月31日に、副首相の職がウィンストン・ピーターズ外務相(ニュージーランド・ファースト党、党首)からデービット・シーモア規制担当相(ACT党、党首)に引き継がれ、オークランド総督公邸で就任宣誓が行われた。現政権では、クリストファー・ラクソン首相率いる国民党とニュージーランド・ファースト党、ACT党が連立を組んでおり、新内閣発足時から任期3年の折り返しの時期に交代が決まっていた(2023年12月11日記事参照)。

(注1)ニュージーランド政府が提供する確定給付年金制度のこと。一定条件を満たす65歳以上の人に年金が支給される。加入した場合は、加入者が満65歳になるまで、積立額の引き出しは通常認められない。ただし、初めて住宅を購入する場合や海外に永住する場合は例外。

(注2)予算額合計は、スクラップアンドビルド方式で、既存の施策を中止することにより財政に戻し入れされる額も含み算出している。

(山崎美樹)

(ニュージーランド)

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