中国自動車メーカー各社、中小企業代金の支払期限を60日以内とする方針表明
(中国)
広州発
2025年06月16日
中国国務院が2025年3月24日に公布し、6月1日に施行された「中小企業代金支払保障条例(中国語:保障中小企业款項支付条例)」を受け、中国の主要完成車メーカー(以下、OEM)各社が相次いで支払期限を60日以内とする対応方針を表明している。
賽力斯集団(セレス)、吉利汽車集団、東風汽車は6月10日に、BYD、奇瑞汽車(Chery)、小鵬汽車(Xpeng)もその翌日にそれぞれ、サプライヤーへの支払期限を60日以内とする方針を表明した。BYDは同方針について、国家や関係部門による産業チェーン・サプライチェーンの安定化と自動車産業の質の高い発展に向けた一連の要請に基づき、中小企業の健全な発展に貢献するために実施するとしている。
中国では、大手企業が下請け業者に対して、優越的な地位を利用した代金支払いの長期化や遅延が発生しており、その結果、一部の企業では商品の販売から半年~1年後に代金が支払われるケースが散見された。多額のキャッシュフローが必要となり、企業経営に大きな影響を及ぼすことから、日系企業各社が大手中国企業への販売や契約締結に踏み切ることをためらう要因の1つとなっていた。中国企業への販路拡大を目指す日系企業が多い中、在中国日系企業などで構成する中国日本商会が発行する「中国経済と日本企業2024年白書」では、買掛金・代金決済を巡る大手企業への指導を求めていた(2024年7月11日記事参照)。
また、中国自動車工業会(CAAM)は5月31日、「公平な競争秩序の維持、産業の健全な発展を促進する提案」を発表した。これを受けて、工業情報化部は公式アカウントで、中国自動車工業会の提案に賛同し、自動車業界の過度な競争の是正を強化することや、公平な秩序ある市場環境を維持し、消費者利益を守り、自動車産業の質の高い発展を推進することを発表していた(2025年6月9日記事参照)。
今回施行した条例は、政府・公的機関や大企業による中小企業(注1)への支払い遅延を防止し、取引の公正性を確保することを目的としており、地域別の通報プラットフォームも整備されている(注2)。OEM各社の今回の発表は条例の趣旨に沿ったもので、今後はその実効性と継続性が問われる。
(注1)中国における産業別企業規模の基準は、添付資料表参照。
(注2)中国工業情報化部の通報プラットフォーム(トライアル版)は同部の政府サービスプラットフォームからアクセスできる。
(西村京子、陳昕)
(中国)
ビジネス短信 55e00402a20a9b25