米カリフォルニア州、トランプ政権の異例の州兵無断展開を提訴、海兵隊派遣で対立激化
(米国)
サンフランシスコ発
2025年06月12日
米国カリフォルニア州では、ロサンゼルス市で始まった連邦移民・関税局(ICE)による移民摘発に対する抗議活動の激化に伴い、同州とトランプ政権の対立が生じている。
同市中心部で6月6日に大々的に移民摘発が実施されたことが抗議活動激化の引き金となった。武装した連邦捜査官数十人が動員され、活動家や支援者らとの対立で緊張が高まる場面が見られた。その後、抗議活動は市内各地に飛び火した。
これを受けて、トランプ政権は7日夜、州兵2,000人の動員を命令した。8日朝に州兵がロサンゼルスに到着した後に抗議活動が再燃し、9日にかけて市庁舎前で数百人規模の集会が行われた。また、抗議者による国道101号線の封鎖や、無人自動運転車ウェイモにも放火されるなど、暴動が激化した。
これに対し、ドナルド・トランプ大統領は州兵2,000人の追加派遣を命じたほか、南カリフォルニアに駐留する約700人の海兵隊員をロサンゼルスに動員するよう指示した。この異例の海兵隊の派遣に対し、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事(民主党)は「連邦政府は市民に対して軍隊を派遣している。訓練を受けた兵士を街に送り込むことは前例がなく、民主主義の原則を脅かす」と強く批判した。ニューサム知事やロブ・ボンタ州司法長官は、トランプ大統領とピート・ヘグセス国防長官を相手取り、連邦政府が州からの要請なしに、州兵を無断で派遣することは「侵略も反乱もない状況下での違法な権限行使」として提訴に踏み切った。
トランプ大統領は10日の記者会見で「もし部隊を派遣していなければ、ロサンゼルスは今ごろ燃え尽きていただろう」と発言し、抗議活動の一部は「金銭的な報酬を受け取っている反乱分子」によるものだと断じた。
抗議活動は全米各都市にも広がっている。シラキュース大学の移民記録分析センターによると、ICEによる拘束者数は2025年1月の約1万2,000人から、5月には約2万4,000人に倍増し、6月1日時点では5万1,000人を超えて、2019年以来の高水準に達している。また、拘束者のうち40%以上が犯罪歴を持たないことも報告されている。
(松井美樹)
(米国)
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