欧州委、EUへの輸入急増リスク対応に向けた監視システム立ち上げ
(EU、中国)
ブリュッセル発
2025年06月16日
欧州委員会は6月5日、新たな輸入動向監視ツールを立ち上げたと発表した(プレスリリース)。第三国・地域による高税率の関税措置などの影響を受け、行き場を失った製品がEU市場に大量に流入するのを抑止することを目的とする。
具体的には、欧州委内に設置したタスクフォースがEU加盟各国の税関当局のデータに基づいて自動更新されるダッシュボードによって、全ての域外国・地域からの輸入を監視する。ダッシュボードは、EU域内でも生産されている製品で、2025年1月1日以降に前年同期比較で輸入量が増加し、かつ平均輸入価格が低下した輸入製品をリスト化し、ウェブサイト上で毎月更新する。また、平均輸入価格の低下を伴う著しい輸入増加が見られる産業分野や輸出相手国について、リストへの掲載頻度に応じて4段階で評価したヒートマップを作成する。さらに、産業界からも最新の市況情報とデータの提供を受けることで、輸入急増リスクがある製品の特定につなげる。
欧州委は特定した製品について、保護が必要かを評価し、場合によってはセーフガード措置など、通商防衛措置の実施に向けた調査などを実施する。また、必要に応じて、EU市場への輸出急増が懸念される相手国と協議する方針も示した。例えば、電気自動車(EV)や鉄鋼などの過剰生産が問題視されている中国とは4月8日、米国の追加関税措置を受け、貿易転換に適切に対応するため、情報交換を行うことで合意した(2025年4月11日記事参照)。
欧州委は貿易相手国や関係者と緊密に連携することで、貿易転換の動きに迅速に的を絞って対応し、積極的にEUの経済的利益の擁護と公正な競争環境の担保を目指す姿勢を示した。
(滝澤祥子)
(EU、中国)
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