テキサス州でのエクソンモービルなど4社の計画に影響、米エネルギー省のクリーンエネルギー関連の助成金撤回

(米国)

ヒューストン発

2025年06月10日

米国エネルギー省(DOE)は5月30日、クリーンエネルギー関連事業24件に対する助成金、総額37億ドル超の撤回を発表した(2025年6月4日記事参照)。これにより、石油大手のエクソンモービルなど4社のテキサス州で予定されていた事業に対する助成金、総額約10億ドル以上が撤回となった。

エクソンモービル(本社:テキサス州スプリング)は助成金3億3,190万ドルを受給し、ベイタウンの石油化学製品製造拠点「オレフィン・プラント」において、エチレン精製過程で使用する天然ガスを水素で代用して脱炭素化を目指す予定だった。

全米に79カ所の発電所を構える電力会社のカルパイン(本社:テキサス州ヒューストン)は助成金2億7,000万ドルによって、ベイタウンに二酸化炭素(CO2)回収・貯留(CCS)の実証施設を建設する計画だった。

イーストマン・ケミカル(本社:テネシー州キングスポート)は助成金3億7,500ドルで、テキサス州ロングビューを拠点に分子リサイクル施設を新たに建設し、再利用が難しいプラスチック廃棄物の処理を見込んでいた。

デンマークの再生エネルギー電力会社オーステッド(米国本社:マサチューセッツ州ボストン、イリノイ州シカゴ)は助成金9,900万ドルで、テキサス州ガルフコーストにeメタノール産出施設を建設する計画だった。

DOEは2024年3月に総額60億ドル、33件の脱炭素事業への助成プログラム支給対象を発表し、テキサス州では上記4社を含む6社への助成が決まっていた。今回撤回には至らなかった2社は、ドイツのケミカル製造会社BASF(米国本社:ニュージャージー州フローハムパーク)に対する7,500万ドルと、建築材料製造のサミット・マテリアルズ(本社:コロラド州デンバー)に対する2億1,560万ドルだ。BASFは、液体副産物を再利用した合成ガス(シンガス)を、同社のフリーポートにある化学工場の低炭素原材料とすることを計画している。サミット・マテリアルズは、テキサス州を含む3州に焼成施設を建設し、生産過程で炭素排出量が多いライムストーンを原料としたセメントから、粘土を原料としたものへの変換を目指す。

米国エネルギー効率経済評議会(American Council for an Energy-Efficient Economy、ACEEE)のエグゼクティブ・ディレクター、スティーブン・ナデル氏は「助成金はトランプ政権が目指す、米国の製造業の再活性化の核となるもので、撤回措置は短絡的」と述べた。

(キリアン知佳)

(米国)

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