循環型経済の中核拠点を目指すドイツNRW州、日本企業の参画を呼びかけ

(ドイツ、日本)

調査部欧州課

2025年06月19日

ドイツのノルトライン・ウェストファーレン(NRW)州貿易投資振興公社とデュッセルドルフ市は6月17日、東京で「欧州の循環型経済を牽引する中核拠点」と題したビジネス投資セミナーを開催した。

NRW州は、ドイツ有数の工業集積地帯で、高い技術力と国際的な競争力を持ち「隠れたチャンピオン」と呼ばれる中小企業やスタートアップ、外国企業が集積している。さらに、68の大学と60の独立研究機関を有する研究開発の中心地であり、多くの優秀な人材を確保できることも強みだ。州都デュッセルドルフ市を中心に、NRW州には650以上の日本企業が進出しており、その半数がNRW州に欧州本社を置いているという。

講演したNRW州経済・産業・気候保護・エネルギー省によると、循環型経済(サーキュラーエコノミー)の推進は、気候変動、環境問題の解決だけではなく、重要資源の不足を防止し、供給をコントロール可能にする経済的な側面でも重要だ。循環型経済の実現には、業界や国境を越えた協力が不可欠で、強力で信頼できるパートナーとして、日系企業への期待が示された。

またNRW州は、循環型経済への産業転換の中核を目指し、公共調達や企業への資金的支援にも取り組んでいる。エコシステム構築のため官民共同で設立された「サーキュラーバレー外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」は、世界初の循環型経済に特化したアクセラレータープログラムや、消費者の理解を促進する広報活動、政策提言などを担う。

また、帝人、ヘンケル、竹中工務店、ティッセンクルップの4社が登壇し、各社の循環型経済への具体的なソリューションを紹介した。帝人は、独自開発したリサイクル性に優れた熱可塑性の炭素繊維強化樹脂や、EUのELV指令(2023年7月20日記事参照)に対応可能な廃車のリサイクル材を使用したポリカーボネート製部品などを紹介。また、竹中工務店は、リユース・リサイクル建材の利用、既存の建造物の活用や解体のしやすさを考慮した設計など、「サーキュラーデザインビルド」による廃棄物削減や循環サイクルの最適化について講演した。

パネルディスカッションに登壇したジェトロ・デュッセルドルフ事務所の菅野一義所長は、NRW州政府の循環型経済に向けた産業構造変革への強いコミットメントを評価し、NRW州では「日系企業は現地のグリーンテック企業のエコシステムに参入するチャンスがある」と述べた。

写真 パネルディスカッションの様子(ジェトロ撮影)

パネルディスカッションの様子(ジェトロ撮影)

(川嶋康子、近藤慶太郎)

(ドイツ、日本)

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