米テキサス州知事、先進原子力発電技術を開発促進する新州法に期待

(米国)

ヒューストン発

2025年06月19日

第89回米国テキサス州議会が閉会を迎えた6月2日、同州のグレッグ・アボット知事(共和党)は、「先進原子力発電法(HB14)」が州議会を通過したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

同法は、3億5,000万ドルを歳出し、州知事室に「テキサス先進原子力エネルギー局(Texas Advanced Nuclear Energy Office」」を設立する。同局は、軽水炉(LWR)や小型モジュール原子炉(SMR)、マイクロ炉、コジェネレーション(注)などを含む、第3世代以降・第4世代の先進原子力発電事業を所管し、技術開発を促進する。アボット知事は「テキサスは世界のエネルギー首都」として、同法案により次世代の原子力の開発と運用が活性化することに期待すると述べた。

アボット知事は2023年8月に、テキサス公益事業委員会(Public Utility Commission of Texas、PUCT)に対して先進原子力発電に関する研究・計画班の設立を要請し、2024年11月に最終報告書を発表した。同報告書は、今後、電力需要の増加を見込む中、原子力発電の安全性を認め、先進原子力発電開発を推奨する内容で、開発における現状と課題についてまとめている。先進原子力発電所の候補地として、ヒューストン港などのメキシコ湾岸沿いや、テキサス州各地に広がる半導体製造拠点、データセンター集積地のテキサス州中部やダラス近郊のメトロプレックス(Metroplex)などを挙げた。

また、テキサス州の公立高等教育機関であるテキサスA&M大学システム(本部:テキサス州カレッジステーション)は、原子炉開発企業4社と連携し、小型モジュール原子炉(SMR)の開発を進めている(2025年2月20日記事参照)。

(注)LWRは、軽水を減速材および冷却材に使う形の動力炉。SMRは、従来の電気出力1,000メガワット(MW)級大型原子炉に比べ、1基あたりの電気出力がおおむね300MW以下の原子炉で、工場でユニット(モジュール)製造して設置場所に輸送できる。マイクロ炉は、一般的に熱出力2万キロワット(kW)以下(または電気出力1万kW以下)の超小型の原子炉。コジェネレーションは、高効率発電と水素製造を同時に行う技術。

(キリアン知佳)

(米国)

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