長安汽車、新エネ車の海外生産初拠点となるタイ工場が稼働
(中国)
成都発
2025年06月06日
重慶市に本社を構える中国大手自動車メーカーの長安汽車は5月16日、タイ中部のラヨーン県で同社初となる新エネルギー車の海外工場が稼働し、右ハンドルモデルの電気自動車(EV)ブランド「深藍(Deepal)05」の生産を開始したと発表した。
同工場は、2023年11月に着工した(2023年11月20日記事参照)。総投資額は100億バーツ(約430億円、1バーツ=約4.3円)。今回稼働した第1期プロジェクトには溶接、塗装、エンジン組み立て、バッテリー組み立て、最終組み立ての主要工程のラインが備えられており、「深藍(Deepal)」のほか、同社高級ブランド「アバター(AVATR)」や「啓源(Qiyuan)」なども生産する予定。年間生産能力は10万台。第2期プロジェクトが完成すると、年間生産能力は20万台に拡張することが見込まれる。同工場の製品はタイ国内市場への供給のみならず、オーストラリアやニュージーランド、英国、南アフリカ共和国などへの輸出も予定される。
重慶汽車工程学会によると、長安汽車はコストを抑えるため、現在、中国国内から多くの部品を調達しており、重慶市から東南アジア向けの輸送ルートの西部陸海新通道(注1、2025年4月21日記事参照)を利用して、自動車部品やKD(注2)パーツを運んでいる。片道の輸送時間は約15~18日で、物流コストも従来と比較して約20%の削減を実現している。
長安汽車の朱華栄董事長は、重慶市共産党委員会の機関紙「重慶日報」の取材に応じ、「将来はタイに当社の技術研究開発センターを設立し、車種の現地化設計、機能の開発に力を入れて、現地市場のニーズに合った研究開発に取り組んでいく」と説明したほか、同社の海外戦略「海納百川計画」について、「2030年まで海外に100億ドルを投資し、1万人の雇用を創出し、海外年間販売台数を120万台にする」と表明した(「重慶日報」2025年5月16日)。
(注1)主要ルートは、重慶市から貴州省、広西チワン族自治区を経由して、東南アジアへ至るルートと、重慶市から雲南省を経由して、東南アジアへ至るルート。そのほか、重慶市から湖南省を経由するルートや、成都市を起点とするルートもある。
(注2)KDとはノックダウン(Knock Down)の略称で、KD生産は自動車生産などで部品のセットを輸出し、現地工場で組み立てを行う生産方式。
(王植一)
(中国)
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