パリ控訴院、フランス郵政公社の注意義務法違反の第一審有罪判決を支持

(フランス、EU)

パリ発

2025年06月23日

パリ控訴院は6月17日、フランス郵政公社(ラ・ポスト・グループ、以下ラ・ポスト)に対し、人権に関する注意義務法違反で有罪判決を下した。ラ・ポストはすでに下級審のパリ司法裁判所で有罪判決(2023年12月15日記事参照)を受けていたが、2024年3月に控訴すると発表(2024年6月26日記事参照)していた。

控訴院は、ラ・ポストが作成したリスクマップが「ラ・ポストおよびそのサプライヤー、サービス業者、下請け業者のフランス国内外の活動について、商法典L225-102-4条外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(フランス語)のIに規定されている人権、基本的自由、労働における健康と安全などのカテゴリーにおけるリスクを、重大性や関連リスクの要因を明確にすることなく、列挙、説明しているだけで、優先順位付けがなされておらず、法的要件を満たしていない」として、第一審の判決を支持した。これまで注意義務法に基づく有罪判決を受けた企業は、ラ・ポストのみ。

今回の判決を受けて、ラ・ポストは、「判決を認め、内容を詳細に分析する」とした上で、「控訴院は、同法の解釈と実施に関するいくつかの点を明確にした。これは、企業持続可能性デューディリジェンス指令(CSDDD)に関するオムニバス法案(2025年3月7日記事参照)がEUで審議中という状況において、有益なものである」としつつ、「国際原則に準拠し、かつEU域内の公平な競争条件を損なわないようデューディリジェンスの義務を一貫かつ適切に適用するよう求める」とした。

ラ・ポストを提訴した労働組合のSUD-PTTは、「控訴院は、エマニュエル・マクロン大統領がEUのデューディリジェンス反対派に加わり、競争力を何よりも優先する姿勢を示すという緊迫した中で判決を下した。右派や欧州の産業界、商業界のロビー団体が、デューディリジェンスの国内法化と、欧州委員会提案の欧州指令を簡素化するオムニバス法案に反対の声を上げており、ゲリラ戦の様相を呈している。この判決は、基本的自由、人権、環境のために闘う労働組合やNGOにとって強いメッセージだ」とした。

マクロン大統領は5月19日、外国企業の投資誘致を目的とした第8回「チューズ・フランス(Choose France)」サミット開催(2025年5月26日記事参照)の演説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(フランス語)の中で、CSDDDと企業持続可能性報告指令(CSRD)に対し規制緩和と競争力の強化を優先する姿勢を示し、「CSDDDは1年延期されたが、撤回すべきである」と述べた。

(奥山直子)

(フランス、EU)

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