フランス投資サミット、AI投資加速
(フランス)
パリ発
2025年05月26日
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は5月19日、外国企業の投資誘致を目的とした第8回「チューズ・フランス(Choose France)」サミットをベルサイユ宮殿で開催した。200人を超える外国企業の経営者を招いて、フランスの投資環境の魅力をアピールした(注1)。
マクロン大統領は演説で、国際経済の不確実性と競争の不公平さに言及し、EUの競争力強化に向けて「ドラギ報告書」(2024年9月19日記事参照)と「レッタ報告書」(2024年4月25日記事参照)の実行を急ぐ必要があると述べた。規制の簡素化に加え、人工知能(AI)やグリーンテック分野での投資拡大や公平な競争環境の確保が不可欠だと訴えた。
このサミットに合わせて、外国企業による合計53件の投資プロジェクトが発表された(注2)。総額は408億ユーロと過去最大に達し、そのうち208億ユーロはAI関連の投資だった。2月のAIアクションサミット(2025年2月17日記事参照)で発表された大型プロジェクトの一部が具体化した。AIや希少金属、防衛、電子などの戦略分野のほか、脱炭素化や循環型経済に関する大型投資も発表され、合わせて1万3,000人以上の新規雇用(間接雇用を含む)の創出が見込まれる。
AIインフラ分野では、米国物流不動産プロロジスが64億ユーロを投じ、物流拠点を拡張するほか、パリ近郊に4カ所のデータセンター〔総容量584メガワット(MW)〕を建設する。カナダの投資会社ブルックフィールドは、200億ユーロ規模のAIインフラ開発の一環として、北部カンブレー市にAI拠点を建設(2026年着工)する予定だ。米AIインフラ開発デジタル・リアリティーも20億ユーロを投資し、パリ近郊のデュニー市にAIキャンパスを新設する。
さらに、アラブ首長国連邦(UAE)の投資ファンドMGXとフランス公的投資銀行(Bpifrance)は、フランスの生成AI企業ミストラルAI(Mistral AI)、米半導体エヌビディア(NVIDIA)と共同で、電力容量1.4ギガワット(GW)を備える欧州最大級のAIキャンパスをイル・ド・フランス地域圏に設立すると発表した(プレスリリース、フランス語)。モデル設計から実装までAIのライフサイクル全体にかかわるセンターの設立を目指す。
環境対策分野では、ドイツのダイムラー・トラックが2026年末までに9,200万ユーロ超を投資し、フランス東部リニー=アン=バロワにある電動バスの製造工場を拡張する。また、ドイツのグリーン水素メーカーHy2genがフランス南部フォス・シュル・メールで、フランス企業H2Vが進める持続可能な航空燃料(e-SAF)の生産プロジェクトに約15億ユーロの投資を行う計画を発表した。
(注1)会計コンサルティング大手アーンスト・アンド・ヤング(Ernst & Young, EY)が5月15日に発表した報告書によると、2024年のフランスの外国投資プロジェクト数は1,025件だった。前年から14%減少したものの、英国(853件)、ドイツ(608件)を上回り、6年連続で欧州最大の外国投資受け入れ国となった。
(注2)日本企業では、電機メーカーのニデック(NIDEC)、種苗会社のサカタのタネによる既存施設の拡張プロジェクトが含まれた。
(山崎あき)
(フランス)
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