米トランプ関税、米国向け越境ECの変容を後押し
(日本、米国、世界)
デジタルマーケティング部ECビジネス課
2025年06月30日
米国Eコーマス大手イーベイ(ebay)の日本法人イーベイ・ジャパンは6月20日、日本からのイーベイ出品者(セラー)向けに実施した「米国関税政策の影響に関するアンケート調査」の結果を発表した(注1)。米国の追加関税措置に伴う影響への対策として、回答者の8割超が「米国以外の新しい市場への参入」を検討しているとし、約6割が対米輸出商品について「現在取り扱っている商品と別の商材にする、または原産国を切り替える」と回答した。米国以外の市場としては、欧州、オーストラリア、東南アジアが挙げられた(注2)。
同社によると、日本から出品される商品の2025年の米国での売れ筋カテゴリーは、ファッション、個人コレクター向け商品、電気・電子機器に次いで自動車部品が第4位に入った。米国では、トランプ政権による自動車および同部品への追加関税措置の影響で、新車販売価格の上昇による買い替えサイクルの長期化や、比較的安価である中古車需要の高まりがみられる。イーベイを利用する米国のバイヤーは個人が多く、さらに自動車保有者が自ら自家用車の修繕を行うこともあることから、個人向けアフターパーツの伸びが今後も期待される。
少額貨物の通関に係るリードタイムに余裕を
米国の1930年関税法321条は、関税評価額800ドル以下を非課税基準枠(デミニミス)として設定し、輸入者は輸入関税の免除を、輸出者は米国輸入時に必要なペーパーワークの削減を享受できるが、米国は5月2日から中国および香港からの輸入に対してデミニミスルールの適用を停止した(2025年4月4日記事参照)。6月26日時点で、国際郵便ネットワークを通じて中国から米国に輸入される少額貨物は、従価税率54%または従量税として郵便物1件あたり100ドルが適用されている。日本越境EC協会(JACCA)によると、5月2日の中国および香港原産品へのデミニミスルールの適用停止以降、10桁の米国関税分類番号(HTSUSコード)を含めた貨物情報(内容物、原産地、米国内の送付先)などの提出が求められることになり、それに伴う税関の確認作業が急増し、通関に要する時間が全体的に伸びているとのことだ。米国向け少額貨物の輸送には、余裕を持ったリードタイムを設けることが重要だ。
(注1)アンケート調査期間は2025年5月27日~6月8日。イーベイ・ジャパンに出品者登録をしているアクティブユーザーを対象とし、799人から回答を得た。
(注2)イーベイは、1995年に米国カリフォルニア州サンノゼで創業。同社の2024年の決算資料によると、全世界のアクティブバイヤー数は1億3,400万人、総出品数は23億点、総取引高は約750億ドル、全体の50%が越境取引だった。日本の出品者の販売先の72%が米国、17%が欧州、8%がアジア・オセアニア地域だった。イーベイのユーザー(出品者および購入者)の多くは個人で、1点ものの出品なども多い。イーベイ・ジャパンが5月20日に発表した2025年第1四半期の取引額上位をみると、1位がレディースアパレル・バッグおよびブランド小物、2位が時計・同パーツおよびアクセサリー、3位がトレーディングカードだった。また、米国のイーベイ・ドッドコム(ebay.com)の出品物のうち中古品率は約50%だが、日本からの出品物は中古品が65%を占め、個人コレクター向けのコンテンツIP(知的財産)商品などが、他国のイーベイのEC(電子商取引)プラットフォームよりも多い傾向にある。
(志賀大祐)
(日本、米国、世界)
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