世界経済の成長は継続するも減速傾向、OECD世界経済見通し
(世界)
調査部国際経済課
2025年06月06日
OECDは6月3日、最新の「世界経済見通し」を発表し、世界経済の成長率(実質GDP伸び率)を2025年、2026年ともに2.9%と予測した。前回(2025年3月)予測から、2025年は0.2ポイント、2026年は0.1ポイントの下方修正し、成長は減速する傾向だ(添付資料表参照)。米国に関しては、成長率が前年から大きく鈍化し、前回見通しからの下方修正幅も、2025年は0.6ポイントと経済の減速が際立った。
OECDは世界経済の減速について、「この2~3カ月の貿易障壁の著しい高まりが経済や貿易政策の不確実性を増加させている。不確実性の高まりは企業や消費者の景況感にマイナスの影響を与え、貿易と投資を抑制している」と指摘した。
主要国・地域別では、米国は2025年に1.6%、2026年に1.5%と、前回見通しからそれぞれ0.6ポイント、0.1ポイントの下方修正となった。これは、輸入品に対する実効関税率の大幅な上昇や、一部の貿易相手国からの報復措置、経済政策の高い不確実性、純移民(注)と労働人口の大幅な減少を反映している。中国は2025年に4.7%、2026年に4.3%と、前回見通しからそれぞれ0.1ポイントの下方修正となった。依然として高い貯蓄率や不動産セクターの調整によって低迷している消費も、設備更新と消費財買い替え推進政策(ビジネス短信特集参照)によって支えられるとした。
ユーロ圏の成長率は、2025年に1.0%、2026年は1.2%と、2024年の0.8%から緩やかに回復する見通しだ。貿易摩擦の影響は、次世代の欧州連合基金による投資や労働市場の強さ、金融緩和の影響で相殺されるとした。
G20加盟国のインフレ率は、2024年の6.2%から、2025年に3.6%、2026年には3.2%に落ち着くとした。一部の国、地域では、関税率の引き上げに伴う貿易コスト上昇の影響を商品価格の下落が部分的に相殺するとした。
今回の予測は、米中間で合意した関税の一時緩和措置(2025年5月14日記事参照)や、米国の鉄鋼とアルミニウムに対する25%の追加関税の維持など、5月14日時点の各国・地域による貿易政策発表を前提としている。
OECDのアルバロ・サントス・ペレイラ主任エコノミストは「投資は世界金融危機以降、減少傾向にあり、成長の足かせになっている」とし、投資を拡大するための大胆な政策改革の推進が必要と訴えた。
(注)純移民とは、年間の当該国への移民流入から外国への移民流出を差し引いたもの。
(峯裕一朗)
(世界)
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