カナダの第1四半期GDP成長率、前期比年率2.2%

(カナダ)

トロント発

2025年06月04日

カナダ統計局が5月30日に発表した2025年第1四半期(1~3月)の実質GDP成長率は前期比年率2.2%外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますだった。また、2024年第4四半期(10~12月)の成長率は、2月発表の2.6%(2025年3月6日記事参照)から、2.1%に下方修正した一方、第3四半期(7~9月)の成長率は2.2%から2.4%に上方修正した。

統計局は、輸出増加が成長を牽引したことに加え、非農業分野の在庫積み増しもGDP成長を後押ししたものの、輸入増加と住宅再販市場の低迷により、全体的なGDP成長率は穏やかな伸びになったと説明した。

主な増加要因だった商品の輸出として、乗用車(16.7%増)と産業機械・装置・部品(12.0%)を牽引役として挙げ、米国による関税引き上げの懸念が前倒しの出荷を促した可能性があると指摘した。また、非農業部門の企業在庫も前期から回復し、特に耐久財を中心とした小売業部門で在庫の積み増しが見られた。

抑制要因となった輸入では、主に産業機械・部品(7.4%増)と乗用車(8.3%増)の増加が輸出分を相殺した。さらには、オンタリオ州を中心に、新築住宅の建設や改築が継続して増加傾向にある中、中古住宅の売買を示す所有権移転費用が18.6%も減少した結果、住宅投資が全体として減少した。このような住宅市場の低迷に加え、非住宅建築物への企業投資の鈍化も見られ、国内最終需要が2023年末以降初めて横ばいとなったと説明した。

統計局の発表を受け、CIBCキャピタルマーケッツのエグゼクティブディレクター兼シニアエコノミストのアンドリュー・グランサム氏は「第1四半期の成長は特に強いものではなかったが、関税などの不確実性に直面しているにもかかわらず、全体的に予想よりも順調に推移しているようだ」と述べ、カナダ中央銀行は次回も政策金利を据え置くと予測した(CIBCエコノミック・フラッシュ5月30日)。

一方で、トロント・ドミニオン銀行の調査部門TDエコノミクスのディレクター兼シニアエコノミストのアンドリュー・ヘンシック氏は「市場は中銀による次回の利下げをほぼ排除したが、失業率の上昇や国内需要の低迷など、経済には陰りが見え始めている」と述べ、中銀は2025年内にあと2回の利下げを行う可能性があると分析した(TDエコノミクス5月30日)。

中銀の次回の政策金利発表は6月4日に予定されている。

(井口まゆ子)

(カナダ)

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