李在明新大統領の公約、経済は着実な成長、外交は国益第一に
(韓国)
ソウル発
2025年06月04日
韓国で6月3日に実施された大統領選挙において、「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)氏が勝利を収めた(2025年6月4日記事参照)。李新大統領は、尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領の非常戒厳(2024年12月4日記事参照)によって毀損(きそん)された民主主義の立て直しや、停滞する経済の再建、全ての労働者に対する普遍的な権利の保障などを公約として掲げていた。特に経済分野については、次の6つを通じて、「本当の経済成長」時代の幕を開けると宣言している。
- 人工知能(AI)分野の世界3大強国入りを実現:政府予算の拡充や民間投資の促進を通じて、AI分野に100兆ウォン(約10兆円、1ウォン=約0.1円)規模の投資を実行。
- グローバル先端産業の育成:AIやバイオなどの先端産業に対する投資を拡大。
- 中小・ベンチャー企業の支援:40兆ウォン規模のベンチャー投資市場の創出。地域成長ファンドの拡大など、非首都圏におけるベンチャー投資を拡充。
- 「エネルギー高速道路」による電力網構築:2030年までに西海岸の海上電力網を整備。エネルギー、バッテリー、電気自動車(EV)などのカーボンニュートラル産業の振興。
- グローバルソフトパワーの強化:文化産業を国の未来成長基盤に育成。K-ポップやK-フード(食品)、K-ビューティー(化粧品)などの世界市場への進出を全面的に支援。
- 地域主導の経済成長:釜山・蔚山・慶尚南道の核心産業である造船、鉄鋼、ロボットなどを集中支援し、これら地域を未来産業の主導地域に育成。湖南(全羅道)地域はAI分野の先導地域とし、再生可能エネルギー、バイオなどのエコ・未来産業の中心地に育成。
また、外交・安全保障分野については、グローバル環境の不安定性が高まる中で、自国の利益を第一に考える実用的な外交を展開すると示した。その中で、韓米同盟を強固な基盤とし、包括的戦略同盟に発展させるとしている。また、日本は「重要な協力パートナー」であり、経済や社会については前向き・未来志向的に対応するとともに、日米韓3国の連携も重要視するとしている。中国は、貿易および安全保障上で重要な国であり、朝鮮半島の安全と円滑な企業活動のために現実的な外交を展開すると表明している。
そのほか、政治・司法では検察改革や司法改革の遂行、社会福祉では住宅年金の拡大による老後資金の安定、労働者休暇支援制度への政府負担の拡充などを通じたベースアップ政策を掲げている。
(橋本泰成)
(韓国)
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