オランダのスホーフ政権が崩壊、10月29日に総選挙実施へ
(オランダ)
アムステルダム発
2025年06月12日
オランダでは6月3日、ヘルト・ウィルダース氏率いる極右の自由党(PVV)がスホーフ政権支持を取り下げ、連立から離脱した。ディック・スホーフ首相は同日、ウィレム・アレキサンダー国王に総辞職を申し入れ、自由民主国民党(VVD)、新社会契約党(NSC)、農民市民運動(BBB)、PVVとの連立4党政権が崩壊した。10月29日に、5年間で3度目となる総選挙が実施される予定だ。
2024年7月に発足したスホーフ内閣は、難民・移民政策を最重要課題の1つとし、第1党のPVVの主張を受けて、政策を厳格化する方針で合意していた。しかし、その後、PVVは政策厳格化を巡って他の3党と対立した。ウィルダース氏は5月26日、国境の封鎖や、難民申請の全面停止、シリア難民の本国送還、難民受け入れセンターの停止などを含めた難民・移民の大幅削減計画を発表したが、他党の協力が見込めないとして、連立を離脱した〔オランダ公共放送(NOS)5月26日〕。
政権崩壊の影響は各分野に拡大する恐れがあり、オランダ産業経営者連盟(VNO-NCW)とオランダ中小企業連盟(MKB)は「重要な決定がなされるまでに再び長い時間がかかるリスクがある」と警告している。気候・環境、住宅・国土計画、農業、医療分野などからも懸念の声が上がっており、労働組合FNVは連立政権について「実質的に何も達成しなかった」と厳しく批判した。一方、スホーフ政権時に大幅な予算削減計画が進められていた教育分野では、計画の白紙化に安堵(あんど)する声が上がった(NOS、6月3日)。
総選挙までは空席となる5つのPVV閣僚ポストのうち、3つを各党1ポストずつ分担し、閣議での議決権バランスを維持する方針だ。3党間でポスト再配分を巡る駆け引きが始まっており、特に解散の要因となった庇護(ひご)・移民相ポストや、風力発電建設への影響力があるインフラ・水管理相ポストへの関心が集まっている(NOS、6月5日)。当面は他の閣僚による代行体制となり、不安定な情勢が続く見通しだ。
(宮崎真里佳)
(オランダ)
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