下院が「OIAI」原則撤廃決議を可決、トランプ政権初のEPA規制撤回へ、ジェトロの環境エネルギー月例レポート(2025年5月)
(米国)
ニューヨーク発
2025年06月13日
ジェトロは6月10日、米国の対環境エネルギー政策動向についてまとめた2025年5月分の月例レポート(427KB)を公表した。このレポートは、日本企業が米国の環境・エネルギー政策に関する動向を把握できるよう、毎月作成して特集ページに連載している。
米下院は5月22日、バイデン前政権下で制定された有害汚染物質排出規制の撤廃を求める決議案「S.J.RES.31」を賛成216票・反対212票の僅差で可決した。同決議案は既に上院を通過しており、ドナルド・トランプ大統領の署名により法制化される見通しだ。
本決議案が対象とする「Once in Always In(OIAI)」原則は、バイデン政権下の環境保護庁(EPA)が2024年9月に復活させた規制だ。同原則では、水銀、鉛、ヒ素、ポリ塩化ビフェニル、ダイオキシンなど7つの汚染物質を大量排出する施設を「主要汚染源」として指定し、仮に対象施設が排出量を連邦基準値未満に削減しても、厳格な測定・報告要件を継続して課すことを義務付けている。
「OIAI」原則は政権交代の度に制定・撤廃を繰り返してきた経緯がある。1995年のクリントン政権時に導入された後、2018年に第1次トランプ政権が撤廃、2024年9月にバイデン前政権が復活させていた。産業界や共和党議員は、「排出削減目標を達成した企業が引き続き規制対象となるのは非合理的で投資抑制につながる」として強く反発していた。
今回の決議案可決により、トランプ政権下で議会審査法(CRA)を活用したEPA規制撤回が初めて実現することとなる。共和党議員は、カリフォルニア州車両排ガス免除承認や省エネ家電製品基準など、合計10件程度のEPA関連規制撤廃を目指している。ただし、CRAの活用期限は5月8日までで、今後の規制見直しには議会を通した法改正が必要となり、実現はより困難となる。
また、下院は「大きく美しい1つの法案(OBBB)」を可決した。同法案では、インフレ削減法(IRA)で措置されたクリーンエネルギーへの税控除を大幅に前倒しして終了することが盛り込まれた。電気自動車(EV)やクリーン水素への税控除は2025年末、再生可能エネルギー生産への税控除は2028年末で終了する。一方、二酸化炭素回収・貯留(CCS)への税控除は維持される。本法案は上院での審議に移り、共和党は7月4日の独立記念日前の可決を目指しているが、上院では既に下院案に反対する共和党議員も出ており、調整は難航すると見られる。
本レポートではこのほか、2026年度連邦政府予算案におけるエネルギー省や環境保護庁の大幅減額案、トランプ政権と州政府との環境政策を巡る対立激化、米韓グリーン海運回廊構築計画などの最新動向も併せて紹介している。なお、世界の環境・エネルギー政策についてのページから動向情報が随時確認できる。
(藤田ゆり)
(米国)
ビジネス短信 10063d51b7cec099