5月の米ISM非製造業景況感指数、関税政策のマイナス影響が目立つが、業種によりばらつきも
(米国)
ニューヨーク発
2025年06月05日
米国サプライマネジメント協会(ISM)は6月4日、5月の非製造業景況感指数を発表した。非製造業景況感指数は49.9と、前月から1.7ポイント低下し、ブルームバーグの市場予想(52.0)を大きく下回った。製造業(2025年6月3日記事参照)と同様に、関税政策の先行き不透明感に伴う需要の押し下げや、同政策に伴う価格上昇がビジネスに影響を及ぼしている様子がうかがえる結果となっている。ただし、一部の業種には底堅さもみられるなど、ややばらつきもみられた。ISMサービス業調査委員会のスティーブ・ミラー会長は今回の結果について、「深刻な景気後退を示すものではなく、どちらかといえば調査対象者の間で広がる不確実性を示している」と総評した。
項目別では、指数の構成要素のうち新規受注(46.4、前月52.3)が基準値である50を下回ったほか、ビジネス活動指数(50.0、前月53.7)も低下した。一方で、雇用(50.7、前月49.0)は小幅ながら改善した。もっとも、企業からは「新しいポジションであろうと人員補充であろうと、全ての採用で精査が行われている」といったコメントが寄せられており、雇用に対して慎重な傾向は続いている可能性がある。供給(52.5、前月51.3、注1)も基準値を上回ったが、これが製造業に見られたようなサプライチェーンの目詰まりが主な原因なのかは判然としない。指数の構成要素以外では、仕入れ価格(68.7)は前月(65.1)から引き続き上昇した。この数値は2022年11月以来の高水準であるほか、全18業種中16業種において価格が上昇していると回答されており、関税政策が米国経済に幅広く影響を及ぼしている様子がうかがえる。
企業のコメントは、業種によってまちまちだった。「関税の変動により、住宅建設のサプライチェーンは混乱に陥っている。多くの製品が依然として東南アジアで製造されており、サプライヤーは値上げの可能性を探り始めている。」(建設業)、「関税は依然として課題。最善策は可能な限り購入を遅らせることだ。」(情報業)、「関税の影響で原材料価格が若干上昇しており、一部のサプライヤーは不確実性をカバーするために在庫の供給を控えている」(鉱業)といったように、関税引き上げの影響を受けやすい業種からはネガティブなコメントが寄せられている。他方で、「ライフサイエンス分野のスタートアップへの投資額は増加している。関税引き上げの影響は注視しているが、戦略の変更にはつながっていない。」(専門・科学技術サービス)、「データセンター、商業施設、インフラの需要により、事業活動は増加している。」(公益事業)といったように、引き続き堅調な成長を報告する業種も複数みられた。
なお、業種別では、景況感が拡大と回答した業種は全体で10業種、縮小したと回答した業種は8業種だった(注2)。
(注1)50を上回ると供給スピードの遅延、50を下回ると改善を示す。供給スピードの遅延は商品・サービスの動きの多さを示すので、指数として景況の良さを表す。ただし、サプライチェーン上のアクシデントなど、指標が本来意図するものとは異なる要因によって供給スピードが遅延した場合でも、数値は上昇することに留意が必要。
(注2)拡大と回答した業種は、宿泊・飲食サービス、レクリエーション、行政、鉱業、公益事業、教育サービス、不動産、情報、ヘルスケア、専門・科学・技術サービス。縮小と回答した業種は、その他のサービス、小売り、企業管理・サポート、農林水産業、金融・保険、建設、運輸・倉庫、卸売り。
(加藤翔一)
(米国)
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