紅海とアデン湾間の通過隻数は2019年以降最低水準、ホルムズ海峡は大きな変動なし

(中東、イラン、イスラエル、イエメン、米国、世界)

調査部中東アフリカ課

2025年06月30日

IMFと英国のオックスフォード大学が共同で開発した船舶自動認識装置(AIS)情報を基に船舶データを提供する「ポートウオッチ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」によると、紅海とアデン湾の間にある物流の要衝バブ・エル・マンデブ海峡を通過する船舶数は、6月24日時点の7日間移動平均(6月18日から24日の平均)で22隻だった。前の週(6月11日から17日)の平均29隻、前年同時期の31隻と比べて減少し、ポートウオッチがデータ公開を始めた2019年以降で最低水準となった。なお、イスラエル・ハマスの衝突前の2023年6月の同期間では81隻だった。

通過数が減少した背景として、6月13日のイスラエルからイランへの攻撃後、両国の攻撃の応酬が発生したことに加えて、米国が22日(米国時間21日)にイランを攻撃するなど、中東情勢の悪化があると考えられる(ジャトロの特集「イスラエル・イラン情勢に関する動向、各国の反応」参照)。イエメンの親イランのフーシ派はこれまでも、イスラエルや紅海を通る民間船舶に攻撃を実施していた。なお、一部の船はAISをオフにして、海峡通過を察知されないよう対処する場合もあり、通過数に計上されないケースもあるとの報道もある。

引き続き喜望峰迂回も多い

バブ・エル・マンデブ海峡はアジアから欧州間の輸送の主要ルート上のスエズ運河にもつながる。スエズ運河でも、ポートウオッチによると、直近の6月24日時点では7日間移動平均は31隻で、前年同時期の39隻から減少している。

なお、フーシ派が紅海近隣の民間船舶を攻撃し始めた2023年11月以降、スエズ運河やバブ・エル・マンデブ海峡を通らない南アフリカ共和国の喜望峰経由の迂回が増加していた(ジェトロ特集「地政学的影響を踏まえた中東・アフリカの物流動向」参照)。ポートウオッチによると、6月24日時点では7日間移動平均は79隻で、前年同時期の96隻から減少している。一方で、2023年同時期の56隻、2022年同時期の46隻と比べると、依然として高い水準だ。

米国のドナルド・トランプ大統領による停戦の公表前には、イスラエルや米国からの攻撃を受けてイラン議会がホルムズ海峡の封鎖を承認するとの動きも見せていた。同海峡は石油や天然ガスの重要なルート上にあり、日本から中東諸国向けに自動車を輸出するルートでもあるが、代替ルートは限定的だ(2025年6月19日記事参照)。ホルムズ海峡通過隻数は6月24日時点の7日間移動平均で105隻となっており、前週の105隻、前年同時期の101隻と比べて大きな変動はない。

(井澤壌士)

(中東、イラン、イスラエル、イエメン、米国、世界)

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