日独経済シンポジウム開催、2025年は水素経済がテーマに

(ドイツ、日本)

デュッセルドルフ発

2025年06月05日

ドイツのデュッセルドルフで毎年開催される文化交流イベント「日本デー」(2025年5月27日記事参照)の一環として、2025526日に「日独経済シンポジウム」が開催された。同シンポジウムは、ノルトライン・ウェストファーレン(NRW)州貿易投資振興公社が主催し、同州経済・産業・気候保護・エネルギー省、デュッセルドルフ市経済振興局、デュッセルドルフ日本商工会議所による共催、またジェトロや在デュッセルドルフ日本総領事館などの協力により開催された。2025 年は「水素経済と未来に向けたドイツと日本のビジネスモデル」というテーマの下、日本とドイツ双方から200人以上が参加した。

シンポジウム前半では、NRW州の外郭機関エネルギー・フォア・クライメイトのゼバスティャン・リンブルク氏、三井住友銀行の下村幸弘氏、エア・リキード・ドイツのオリバー・マイヤー氏が登壇し、水素利活用の促進には価格の引き下げが必要で、技術革新やインフラ拡張などの努力が必要という共通認識の下、「水素産業の立地としてのNRW州:政治・産業・経済からの視点」と題したパネルディスカッションが行われた。下村氏とマイヤー氏は、水素の製造コストがいまだに高止まりしていることが利活用を妨げる大きな要因であることを指摘し、補助金の拡充、規制による需要サイドの利用促進など政策的な積極的支援が必要になると述べた。また、水素にはその製造方法により様々な「色」(注)があり、最終的にはグリーン水素を目指すべきであるものの、そこに至るまでの過程ではその他の「色」も視野に入れて水素利活用の素地を作るべきだ、とリンブルク氏は述べた。

写真 シンポジウムの様子(NRW.Global Buisness提供)

シンポジウムの様子(NRW.Global Buisness提供)

続くシンポジウム後半では、日本とドイツそれぞれの企業から水素社会の実現に向けた取り組み事例が紹介された。旭化成は、欧州における水電解装置の実証実験と北部ドイツにおける水素利活用に向けた取り組みを紹介した。また、トヨタ・ガズー・レーシングは、モータースポーツを通して水素エンジンの発展に貢献したいと述べ、既存エンジンとの共通部品が非常に多い水素エンジンの開発、製造は現在のサプライチェーンと雇用を維持できる点でも優れているとした。ドイツ側から登壇したコージェネレーションシステム(CHP)プラント開発大手の2Gは、同社が福島県や千葉県で行っている水素CHPを利用した脱炭素化社会実現への取り組みを紹介した。エネルギー大手ユニパ―の子会社で、資源、電力などの取引を行うユニパー・グローバル・コモディティーズからは、二酸化炭素(CO2)の最大の削減を最小の予算でできる技術革新が求められており、テクノロジーに秀でた両国のパートナーシップの重要性を強調した。水素の重要性や利活用に向けた流れが逆行することはなく、長期的な視点で我慢強くポジティブな取り組みを続けることが重要という点で、登壇者一同が一致した。

(注)水素は、その製造方法や製造過程での温室効果ガス排出量で色分けされており、主要なものでは「グレー」「ブルー」「グリーン」水素があり、そのほか「ホワイト」「イエロー」「ピンク」「ターコイズ」などの分類もある。グリーン水素とは再生可能エネルギーなどを使って、製造工程においてもCO2を排出せずに作られた水素を指す(2023年6月9日記事参照)。

(櫻澤健吾)

(ドイツ、日本)

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