AEC戦略計画の産業界向け説明会、RCEP協定深化やEUとの協力強化を提言
(ASEAN、マレーシア、シンガポール、フィリピン)
ジャカルタ発
2025年06月17日
ASEAN事務局(本部:インドネシア・ジャカルタ)は6月12日、「ASEAN経済共同体(AEC)戦略計画 2026-2030」の内容について、産官学の関係者への説明会を開催した。同AEC戦略計画は2025年5月26日に開催された第46回ASEAN首脳会合で発表された。「AEC共同体ビジョン 2045」の一環として策定され、2026年から5年間のASEANの経済政策を方向付けるものだ(2025年6月2日記事参照)。
マレーシアのテンク・ザフルル・アジズ投資貿易産業相は開会あいさつで、「かつてASEAN統合を後押ししていたグローバリゼーションは、地政学的緊張や貿易摩擦の影響で後退しつつある」とした上で、「唯一確かなのは、不確実性そのものの存在だ」と述べた。さらに、変化が激しい現在の環境では「急成長よりも機敏さ、急拡大よりも持続可能性と回復力が求められる」と強調した。その上で、「ASEAN加盟国は、透明で自由、公正かつ包摂的なルールに基づく多国間貿易体制を支持し続ける」と表明し、今回のAEC戦略計画のポイントについて、(1)ASEAN域内貿易の拡大、(2)連結性の向上とイノベーションの促進、(3)将来を見据えたデジタル経済枠組みの構築、(4)ASEAN市場の開放と域外国との積極的な関与を堅持する姿勢を打ち出したことだとした。
説明会後には、「地域の経済統合と強靭(きょうじん)性を再定義する」と題したパネルディスカッションが開催された。マレーシアのリュウ・チン・トン投資貿易産業副大臣、フィリピンのアラン・グプティ貿易産業省次官、マレーシア国立大学の名誉教授でISEASユソフ・イシャク研究所の客員シニア・フェローも務めるタム・シウ・ヤン氏などが登壇した。
リュウ副大臣は、米国が世界からの輸入を減少させようとする中、「ASEANは単なる生産拠点にとどまらず、ASEAN自らが大きな消費市場となることが重要だ」と強調した。グプティ次官は「これまでの政策アプローチが担っていた単なるビジネス環境整備にとどまらず、今後は変化する多様なリスクに優先的に対応できる機能的な経済モデルの構築が必要だ」と述べた。タム氏は域外との経済連携について、ASEANプラスワンモデルをさらに発展させ、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定に新たなパートナーを加える「RCEPプラス」や、協力分野の深掘りによる「RCEP2.0」のような構想も検討すべきとした。加えて、同氏は「EUとの協力強化も重要だ」と提言した。
開会あいさつを述べるザフルル投資貿易産業相(ジェトロ撮影)
(大滝泰史)
(ASEAN、マレーシア、シンガポール、フィリピン)
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