ルーマニア大統領選再選挙で極右候補が勝利し決選投票へ、連立与党は敗れ首相辞任

(ルーマニア)

ブカレスト発

2025年05月07日

ルーマニアで2024年11月に実施された大統領選挙は、SNS不正操作などを背景に無効決定が下され(2024年12月10日記事参照)、その再選挙が2025年5月4日に行われた。中央選挙管理委員会が5月5日に発表した最終結果によると、投票者数は957万1,740人で投票率は53.21%だった。

極右のルーマニア統一同盟(AUR)候補のジョルジェ・シミオン氏が得票率40.96%でトップ、無所属で現ブカレスト市長のニクショル・ダン氏が20.99%で次点となった。両者の決選投票は5月18日に行われる。

連立与党の候補のクリン・アントネスク氏は3位で20.07%と、ダン氏にわずかに届かず、敗北した。連立政権の最大政党である社会民主党(PSD)の擁立候補が大統領選挙の決選投票に進まないのは、1989年の民主化後初めてとなる。前回11月の大統領選で2位につけた中道右派のルーマニア救出同盟(USR)のエレナ・ラスコーニ氏は、同党が2025年4月にダン氏を支持すると発表した後も立候補を表明していたが、今回は2.68%と票を伸ばすことができなかった。

無効になった前回の大統領選挙で最多得票を得た、無所属で極右のカリン・ジョルジェスク氏は、今回の選挙にも立候補の意向を示していたが、ルーマニア憲法裁判所により立候補申請が却下され、立候補は認められなかった。今回、シミオン氏は、同氏の支持に回ったジョルジェスク氏の支持層を取り込んで選挙戦を展開した。加えて、シミオン氏は4日、自身が大統領に選出されれば、ジョルジェスク氏を首相などの要職に任用すると語った(「ロイター」5月4日)。

シミオン氏は5月5日、43.45%の得票率を得て勝利したアルバ県の工場を訪問し、集まった従業員らに謝意を示した上で、労働者の手元により多くのお金が残り、この国で子供たちを育てていけるように減税する必要があると述べ、労働者の生活改善に向けた強い意欲をみせた(国営通信社「アジェルプレス」5月5日)。

一方、ダン氏は同日、「今、ルーマニア国民は親欧米路線か反欧米路線か、経済重視か今日の株式市場の兆候が示すような反市場経済かという、非常に重要な選択を迫られている。私たちが5月18日までに話すべきテーマは、いずれを選択するかだ」と語り、決選投票までの2週間、これらについて議論することの重要性を強調した(国営通信社「アジェルプレス」5月5日)。

PSDのイオン=マルチェル・チョラク首相は5月5日、大統領選挙第1回投票の結果を受けて引責辞任した。これを受け5月6日、イリエ・ボロジャン暫定大統領はマリアン=カタリン・プレドィウ副首相兼内務相を暫定首相に任命した。また、チョラク氏は、PSDが連立政権から離脱すると発表した。同党の閣僚は暫定的に職にとどまるものの、暫定期間は最長45日間で、その後、新政権が樹立される必要がある(「ルーマニア・インサイダー」5月5日)。

(本吉美友)

(ルーマニア)

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