オランダ国王の来日とナショナルデー開催に合わせ、ハイテク分野の日蘭連携に関するシンポジウムを大阪で開催
(日本、オランダ)
大阪本部海外ビジネス推進課
2025年05月26日
オランダ企業庁と在日オランダ大使館は5月22日、大阪・関西万博でのオランダ・ナショナルデー開催に伴うウィレム・アレキサンダー国王の来日を機会に、大阪で「日蘭ハイテクDXシンポジウム」を開催した。全体会合ではウィレム国王の臨席の下、オランダのディルク・ベルイヤーツ経済相や日本の半導体メーカーであるラピダスの小池淳義代表取締役社長が登壇し、両国が抱える共通課題への対応に向けたハイテク分野における交流深化をテーマとする講演が行われた。
オランダのディルク・ベルイヤーツ経済相は冒頭のあいさつで、「日本とオランダは425年間にわたる交流の歴史があるが、地政学的な不安定さ(の下)、安定的なサプライチェーン(SC)構築に向けて、両国関係強化はこれまで以上に重要となっている」と指摘。技術進化の加速に合わせて連携の深化が求められる中、人工知能(AI)、半導体、フォトニクスなどの分野においては、両国は戦略的に補完可能な関係が構築できる。そのよう中で、オランダの半導体装置メーカーASMLとラピダスの提携は両国にとって重要なものであり、2026年に締結30周年を迎える日・オランダ科学技術協力協定により2国間の共同研究の基盤が強化され、成果が創出されているが、半導体など鍵となる技術についてはいっそうの深化が求められていると述べた。
ディルク・ベルイヤーツ経済相によるスピーチ(ジェトロ撮影)
ラピダスの小池代表取締役社長は基調講演で、同社の北海道における世界最先端の2ナノマイクロメートル・ロジック半導体製造プロジェクトを紹介した。2022年8月の会社設立後、3年足らずの2025年4月に試験生産を開始。設立当初から国際連携に取り組んでおり、ベルギーのimecやドイツのフラウンフォーファーなどの欧州の研究機関と提携しているほか、半導体露光分野ではASMLの装置を採用したと述べた。同社の取り組みが日本・オランダ間の強固な連携における1つの代表的なモデルになれるとよいと語った。
コンサルティング会社キャップジェミニ・オランダのマネージング・ディレクター、ジェニー・ピーク氏は、両国には高齢化社会、気候変動、サイバー犯罪への対応などの共通課題があるとし、すでに、AIを活用した画像解析・予測による病理診断・早期発見と患者データの保護・共有、膨大な農業・環境データを融合した高効率な食糧生産に貢献する精密農業などの分野で共同プロジェクトが進展していると語った。
パネルディスカッションでは、両国の企業・研究機関の代表者が、地政学リスクへの対処と信頼のできるSC構築と多角化、最先端技術の発展に不可欠なユースケース(注)の提起や人材育成などを切り口とした2国間の協力深化について意見交換が行われた。
パネルディスカッションの様子(ジェトロ撮影)
このほか、2カ国の企業・団体が締結した7案件の覚書の発表が行われた。
(注)顧客やユーザーに対して、商品やサービスを用いた場合に、どのような課題解決につなげられるかを提起すること。
(齋藤寛)
(日本、オランダ)
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