イオンモール、中国内陸への事業拡大を加速

(中国)

青島発

2025年05月08日

ショッピングモールの開発・運営を手掛ける、イオンモールが中国内陸部への事業展開を加速している。2025年末に湖南省長沙市に湖南省2号店(延床面積約23万平方メートル)を開業予定であるほか、2027年には湖北省武漢市に湖北省5号店の出店を計画している。イオンモールは20254月現在、北京市、天津市、山東省、江蘇省、浙江省、湖北省、湖南省、広東省に合計24店舗を展開している。2030年までに内陸部への出店を拡大し、中国全土で31店舗体制にする計画だ。イモンモールが中国内陸部への展開を目指す背景と日本の中小企業が中国内陸部で事業展開する際の留意点などについて、永旺夢楽城(湖北)商業管理の酒井俊郎総経理に聞いた(取材日:2025424日)。

(問)内陸部で事業拡大を加速している背景は。

(答)中国の沿海部は、多くの国内や外資系の商業デベロッパーがひしめき合っており、新たなショッピングセンターの出店が難しい。湖北省および湖南省では、私たちが得意とする郊外での大型ショッピングセンターが比較的少ない上、購買力の指標でもある域内総生産(GRP)について、湖北省武漢市と湖南省長沙市はいずれも5%前後の比較的高い伸びを示しているためだ。

(問)内陸部の消費者の傾向は。

(答)同じ内陸部でも地域によって違う。湖南省は、モノの消費よりも体験型アクティビティや飲食などのナイトタイムエコノミー(注)を楽しむことに対する支出が多い。湖北省は、一般的に商店の夜間営業時間が短く、支出に対しても慎重だ。年代別では、これまでファミリー層は、子供に対する教育関連費用の支出が非常に多かったが、政府による学習塾の規制や、郊外に子供の無料の遊び場を作るなど、消費傾向が大きく変化している。また、最近は、日本同様にアウトドア商品がよく売れている。20代の独身の若者は将来への不安からか、支出を抑える傾向にあるが、お年寄りは、以前はモール内で孫の面倒を見て疲れている姿をよく見かけたが、最近では自分の生活を楽しむようになった。また、癒しにつながるペット関連商品は好調だ。ただ、ペットの生体販売はショッピングセンターでは浸透せず、消費者は郊外のペット市場で購入しているケースが多い。

(問)日本の中小企業がイオンモールを中国市場での販売のためのプラットフォームとして活用する可能性は。

(答)201412月に湖北省1号店を開業した際は、内陸部に日系のショッピングセンターはほとんどなく、20社ほどの日系企業に出店いただいた。しかし、現在はそのほとんどが退店した。中国では商品やサービス、メニューを現地ニーズに合わせて速やかに変更することが求められるが、なかなか迅速な対応ができなかったことが原因だ。私たちイオンモールの事業は不動産業なので、テナントの出店サポートがメインとなるが、グループのイオンスーパーは、日系の食品や日用品などの消費財の需要はある。もし、中国内陸部での事業展開を希望される企業さまがいらっしゃれば、イオンスーパーの商品責任者におつなぎできる。私どもの新たな事業展開のヒントになることも多いので、ぜひお声掛けいただきたい。

写真 イオンモール内のイオンスーパーの様子(ジェトロ撮影)

イオンモール内のイオンスーパーの様子(ジェトロ撮影)

(注)夜間に行われる消費などの経済活動の総称を指す。

(皆川幸夫)

(中国)

ビジネス短信 f6ee42384521724b