中国の9,500台積載可能な世界最大級の自動車運搬船、欧州へ初航海
(中国)
上海発
2025年05月26日
上海汽車集団傘下の上汽安吉物流は同社ウェブサイトで、建造した世界最大級の自動車運搬船「安吉安盛号」が5月15日、欧州向けに初航海を開始したと発表した。同船は自動車を9,500台積載可能だ。全長228メートル、幅37.8メートルの超大型ロールオン・ロールオフ船(RORO船、注)として、低炭素・省エネ、かつスマート技術を統合した設計が特徴となっている。初航海では、上海汽車集団の自主ブランド車約5,000台のほか、比亜迪(BYD)や奇瑞汽車、長安汽車など中国ブランド車約2,000台、合計7,000台を積載して、欧州市場へ向かった。
同船は国際基準を上回るエネルギー効率を達成し、メタノール燃料への対応を前提とした設計も採用している。あらかじめ大容量のメタノール貯蔵庫やパイプなどを確保することで、将来的に船主がメタノール燃料への切り替え対応を行い、カーボンニュートラルを実現することが可能だとした。
中国自動車工業協会(CAAM)によると、2024年の中国自動車輸出量は586万台に達し、2年連続で世界首位を記録した。上汽安吉物流は急成長する輸出需要に応えるべく、自動車の遠洋輸送で最も重要なツールのRORO船への投資を続けている。同社は遠洋輸送船として現在15隻を保有しており、2026年までに22隻に増強するとしている。また、西欧州や地中海地域、メキシコ、南米の西部地域、東南アジア、オーストラリア、ニュージーランド、中東地域など、中国自動車メーカーの主な輸出先をカバーする計画だ。
ほかの中国自主ブランド自動車メーカーも相次いで海外市場への展開を強めており、遠洋輸送船団整備のための投資拡大の動きが見られる。2025年1月に奇瑞汽車は1隻目となる遠洋自動車輸送船を保有し、欧州向けの便を初出航させた。2隻目は6月に進水予定、3隻目は建造中だ。また、BYDは4月下旬に最大積載能力9,000台の「深セン号」の引き渡しを受けた後、すぐにブラジルへ出航しており、2025年内に新たに合計8隻のRORO船の運営を開始する計画だ。
加えて、2024年12月に上海汽車集団が建設に参加した長江流域で最大規模のRORO船ターミナル「海通太倉港自動車ターミナル」が正式に稼働した。RORO船のほか、関連するインフラ建設にも注力していることが分かった(2024年12月23日記事参照)。
(注)RORO船とは、貨物を積んだトラックやトレーラーがそのまま自走して乗り込み、運搬できる貨物用船舶を指す。
(龐婷婷)
(中国)
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