ハンガリーの経済成長率、再び足踏み
(ハンガリー)
ブダペスト発
2025年05月12日
ハンガリー中央統計局(KSH)が4月30日に発表した速報値(プレスリリース)によると、2025年第1四半期(1~3月)の実質GDP成長率(季節調整済み)は前年同期比マイナス0.4%、前期比マイナス0.2%となった。2024年第2、第3四半期のテクニカル・リセッション(景気後退)(2024年11月6日記事参照)から2024年第4四半期に一時的に改善を示したものの、直近の3年間で7回目のマイナス成長(前期比)を記録した。
KSHは6月上旬に部門別の詳細な内訳を発表する予定だが、今回の発表で、工業と建設業が経済パフォーマンスを鈍化させ、サービス部門がGDPを支えていることを強調した。
ナジ・マールトン国家経済相は、EUが誤った経済政策を追求してきたためだとし、「戦争と制裁が続く限り、ハンガリーを含む欧州は戦争の代償を払うことになる」という政府の主張を繰り返した。また、対応措置の1つとして、政府は工業生産と投資活動を再強化するために、工場新設支援策「100の新工場プログラム」(注1)を「150の新工場」に拡充するプログラムを発表した。
経済アナリストたちは、経済成長が芳しくない主な理由として、外需の縮小が輸出を抑制していること以外に、ここ数四半期の投資急減からの急激な回復が今訪れる可能性は低いことを挙げている。その背景には、「景況感は依然低迷しており、EUからの資金援助は縮小を続け、予算不足で公共投資が妨げられていることが挙げられる」と指摘している。
2025年の経済成長率見通しについて、政府が予測する2.5%を実現するためには、残り3四半期全てにおいて前期比で約2%の成長を達成する必要があるが、アナリストらは、特に貿易戦争の激化などのネガティブなリスク要因があるため事実上不可能とみている。同様に、予算委員会(注2)も、政府の2026年度予算案の基盤である成長見通しに懐疑的だ。同委員会の公式見解では、世界の貿易摩擦、米国関税措置に伴う高い関税水準による輸出の落ち込みと、不透明な見通しによる投資活動の抑制が、成長に悪影響を及ぼしている、としている。
(注1)「100の新工場プログラム」は、ハンガリー全土を対象とした工場新設支援により、既存の雇用保護と新規の雇用創出を強化することを目的として、2025年2月に発表された産業政策(2025年2月28日記事参照)。
(注2)ハンガリーの予算委員会は国会の委員会で、政府の予算案を審議して修正案を提案し、意見をまとめる。また、政府の財政運営を監視し、財政の健全性と透明性を確保する役割を担っている。
(バラジ・ラウラ)
(ハンガリー)
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