米USTR、メキシコ政府に電子部品メーカーの労働問題の確認要請、トランプ政権下で3件目

(米国、メキシコ)

ニューヨーク発

2025年05月12日

米国通商代表部(USTR)は5月9日、メキシコ国内の電子部品メーカーの製造施設での労働問題を巡って、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に基づいて、メキシコ政府に事実確認を要請したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。トランプ政権発足後のメキシコ政府に対する労働問題の確認要請は今回が3回目で(2025年5月9日付地域・分析レポート参照)、措置の発動が続いている。

USMCAに設けられた「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM)」は、締約国内の事業所単位で労働権侵害の有無を判定する手続きで(注)、労働権侵害の事実が確認されれば、USMCA特恵措置の適用停止などの罰則が科され得る。RRMに基づく労働権侵害の事実確認要請は、締約国政府が独自に開始できるが、労働組合などの第三者機関が締約国政府に対して事実確認要請を行うよう申し立てることも可能だ。

今回の事案では、2025年4月に、メキシコ国内の労働組合から米国政府に対して、自動車・航空宇宙などの産業用途にコネクタ、アンテナ、ケーブルアセンブリ、ハーネスなどの電子部品を製造するアンフェノール・オプティマイズ・メキシコのメキシコ北西部ソノラ州の製造施設で労働権侵害があったとして、メキシコ政府にRRMに基づく事実確認要請を行うよう申し立てがあった。

申し立てを受けたUSTRは、「労働権侵害の事実を示す信頼に足る証拠があった」として、メキシコ政府に事実確認を要請した。また、米国は今回の事実確認要請をもって、当該施設からの製品の輸入について、労働問題の解決に両国が合意するまで最終的な関税の精算を留保できる。実際に、ジェミソン・グリアUSTR代表は、スコット・ベッセント財務長官に対してこの措置の適用を通達した。

(注)ただし、米国・カナダ間にはRRMは設けられていない。

(葛西泰介)

(米国、メキシコ)

ビジネス短信 ec2b9846b2767eb0