米連邦議会上院、カリフォルニア州のZEV販売義務を無効化する決議案可決

(米国)

ニューヨーク発

2025年05月23日

米国連邦議会上院は5月22日、カリフォルニア州のゼロエミッション車(ZEV、注)販売義務を無効化する共同決議案(H.J.Res88外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を可決した。

同決議案は、連邦議会が行政機関によって定められた「規則」を一定期間内に審査し、両院で単純過半数が賛成して大統領が署名すれば、取り消すことができる「議会審査法(CRA)」に基づいて提出されたものだ。4月2日にジョン・ジョイス下院議員(ペンシルベニア州、共和党)が発起人となって議会に提出し、5月1日に246対164(民主党議員35人を含む)の賛成多数で下院を通過した。上院ではエリッサ・スロットキン議員(ミシガン州)が民主党から唯一賛成票を投じ、51対44で可決した。ドナルド・トランプ大統領は近く署名するとみられている(政治専門紙「ポリティコ」5月22日)。

決議案の対象となるのは、カリフォルニア州が2022年に策定したアドバンスド・クリーンカーII(ACCII)規制だ。ACCIIは2035年までに新車販売の100%をZEVとする方針などを定めている。同州は大気浄化法(CAA)の下、連邦政府が定める規制内容より厳しく、必要不可欠で特別な事情がある場合には、連邦基準の適用免除が認められている。ACCIIはバイデン政権下の2024年12月、連邦基準の適用免除が認められていた(2024年12月20日記事参照)。しかし、主要自動車メーカーを代表する米国自動車イノベーション協会(AAI)のジョン・ボゼーラ会長兼最高経営責任者(CEO)が「市場とEV販売要件の間には大きなギャップがある。(ACCIIが定める)義務を満たすには、EV移行のための限られた資金をテスラからのクレジット購入のために振り向ける必要がある。これは、電気自動車(EV)の普及や充電インフラの構築には役に立たず、雇用と製造の喪失、自動車価格の上昇、車種の選択肢の減少につながるドミノ効果を生み出すことになる」と述べるなど、業界からは同規制の撤廃を求める声が多く上がっていた(2025年1月15日付地域・分析レポート参照)。

上院の決議案可決を受け、全米自動車ディーラー協会(NADA)は「カリフォルニア州の規制当局による12州でのガソリン車とハイブリッド車の禁止を阻止する法案が上院で可決されたことを称賛する。(ACCIIが定める)非現実的な義務付けは、不十分で信頼性の低い充電インフラと相まって、消費者の選択肢を大幅に減少させ、全ての米国人にとって新車、中古車、トラックの価格を高騰させることになる」と歓迎の意を表した。

一方、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事(民主党)は「この上院の採決は違法だ。共和党は、自らの議会運営規則を無視し、何十年にもわたる前例を踏みにじった。われわれは、トランプ政権の共和党が米国を再びスモッグで汚し、リチャード・ニクソン大統領とロナルド・レーガン大統領の時代までさかのぼる取り組みを台無しにし、経済の未来を中国に譲り渡すのを黙って見過ごすわけにはいかない」と強く批判した。また、同州のロブ・ボンタ司法長官は、今回の免除の撤回はCRAを違法に利用した措置だとし、訴訟も辞さないとしている。

(注)クリーンビークル(CV)と同義。対象となる車種は、バッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)。

(大原典子)

(米国)

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