医薬品やスマートフォンの対米輸出、今後の米国の動向に注視

(インド)

ベンガルール発

2025年05月12日

米国の相互関税措置により、各国経済への影響が懸念される中、インドと米国の貿易データをまとめた。輸出は4,427億9,400万ドル、輸入は7,171億2,700万ドルと、2,743億3,300万ドルの入超だった(添付資料表1参照)。インドは毎年、巨額の貿易赤字を計上しており、近年その傾向に大きな変化はない。

一方、対米貿易に限ると、輸出の807億8,700万ドルに対し、輸入が436億2,700万ドルと、371億6,000万ドルの出超となっている(添付資料表2参照)。インドにとって米国は最大の輸出相手国であり、インド側の大幅な黒字収支を米国のドナルド・トランプ大統領が問題視し、インドに対し米国製品に対する輸入関税の引き下げ要求をはじめ、さまざまな圧力をかけてきたとみられる。

米国向け輸出品目をさらに細かく見ると、医薬品(85億8,600万ドル)、スマートフォン(73億7,500万ドル)、ダイヤモンド(48億8,600万ドル)などが上位を占める(添付資料表3参照)。特にスマートフォンは、2023年の49億4,100万ドルから49.3%増と大きく輸出額を伸ばしている。また、米国による相互関税を避けるため、インドからの米国アップルの携帯電話端末iPhone(アイフォーン)の米国向け輸出が3月に急増した(2025年4月16日記事参照)。現在は、26%の相互関税に先んじて、鉄鋼、アルミニウム、自動車・自動車部品に25%の追加関税が発動されているが、医薬品やスマートフォンは追加関税の対象外となっている。

一方、現時点では相互関税から除外すると発表されたスマートフォンなどの電子機器に対しても、相互関税とは別の関税を課す方針との報道(「ロイター」4月13日)や、医薬品についても、追加関税への検討を開始したなどの報道(「ロイター」4月26日)もあり、予断を許さない状況だ。医薬品とスマートフォンがインドの米国向け輸出に占める割合はそれぞれ10.6%、9.1%に上っており、仮に両品目に追加関税が発動された場合、インドにとって大きな影響となることが予想される。

4月にジェトロが日系企業に対し聞いたところ、米国の追加関税による自社事業への直接的な影響は不明との声が多かったが、「世界経済が鈍化することで、インド経済の成長が減速し、内需に影響が及ぶのではないかと懸念している」といった声が複数聞かれた。

(水谷俊博)

(インド)

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