米国のトランプ関税の中国との交渉、いったん決着も、経済へのダメージを53%が懸念、世論調査
(米国)
調査部米州課
2025年05月14日
米国のトランプ政権の中国との貿易交渉は、10%のベースライン関税を適用することでいったん決着した(2025年5月13日記事参照)。最近の世論調査では、依然として53%がトランプ関税による経済へのダメージを懸念するという結果だった。
経済誌「エコノミスト」と調査会社ユーガブは5月14日、トランプ政権などに関する世論調査結果(注1)を発表した。それによると、トランプ関税が米国の経済を「損なう」と53%が回答し、「助ける」(30%)を大きく上回った。
また、ドナルド・トランプ大統領は他国のリーダーたちから尊重されていないと54%(あまり尊重されてない28%、全く尊重されてない26%)が回答した。他国の国民からトランプ氏が尊重されていないと回答したのは59%(あまり尊重されてない33%、全く尊重されてない26%)だった。
一方、トランプ氏も他国のリーダーたちを尊重してないと53%(あまり尊重してない26%、全く尊重してない27%)が回答した。
各地の紛争がより大規模な戦争に拡大することへの認識については、「ロシア・ウクライナ紛争」「イスラエル・パレスチナ紛争」が61%(注2)と高く、「インド・パキスタン紛争」も48%に達した。
海上運賃の急騰を予想
2026年には米国で多くの建設・製造プロジェクトが予定されており、国際貨物の運賃分析などを提供するゼネタの主任海運アナリストのピーター・サンド氏は、中国から米国西海岸への海上運賃は短期的に最大20%上昇すると予想する。対中関税の一部を90日間停止したことから、猶予期間に貨物が集中することも指摘している(CNBC5月12日)。
ミシガン大学の経済学教授、ジャスティン・ウォルファーズ氏はX(旧Twitter)で、対中交渉により米国の貿易政策と経済見通しは良くなったとしているが、同時に、状況は「(トランプ氏)就任式当日よりもはるかに悪い」と指摘した。同氏は、状況は改善されたものの、景気後退の確率は五分五分としている(CNN5月12日)。
(注1)実施時期は5月9~12日、対象者は全米の成人1,786人。
(注2)内訳は、「ロシア・ウクライナ紛争」(既に紛争拡大の火種だ17%、非常にあり得る18%、かなりあり得る26%)、「イスラエル・パレスチナ紛争」(既に紛争拡大の火種だ19%、非常にあり得る16%、かなりあり得る26%)、「インド・パキスタン紛争」(既に紛争拡大の火種だ5%、非常にあり得る16%、かなりあり得る27%)。
(松岡智恵子)
(米国)
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