事業継続に困難抱えるロシア進出イタリア企業

(ロシア、イタリア)

調査部欧州課

2025年05月28日

ロシアの大手メディアグループRBKは5月21日、イタリア・ロシア商工会議所のビンチェンツォ・トラニ会頭へのインタビュー内容をウェブサイトに掲載した。トラニ会頭はインタビューで、かつて両国間にあった親密な経済協力関係が揺らぎ、今やイタリアとロシアの信頼関係は危機的状況にあると語った。

会頭によると、ロシアがウクライナに侵攻を開始した2022年以降、全体の約30%のイタリア企業がロシア市場から撤退した。これらは、ロシアでの事業規模が小さかった企業や国営企業、対ロ経済制裁の対象商品を扱うことを理由にロシアにとどまると規則違反となるリスクのあった企業だ。

市場を去ったイタリア企業は甚大な損失を被ったが、他の欧州企業には自国の保険が適用された。ロシア撤退を決めたドイツの大手企業の多くは、ドイツのヘルメス信用保険(現在はアリアンツ・トレード)から撤退に係る補償を受けたという。補償を得られない、または、ロシア市場の将来性に対して柔軟な発想と好奇心を持っていたイタリア企業はロシアにとどまった。

ロシア事業を継続するイタリア企業は現在、新たな現実に適応しつつ、リスク管理と収益向上のモデルを模索している。企業を取り巻く環境は総じて厳しい。欧州内外で決済をはじめとする金融面での規制や、法令順守にかかる問題に直面し、事業継続が困難な状況にある。トラニ会頭はインタビューで、いかなる経済制裁への違反がないにもかかわらず、ロシアとのビジネスがあるというだけで、たとえロシアと直接関係しない資金調達や支払いでさえ企業は著しい制限を受けていると強調した。

同会頭はロシアのカーシェアリング大手デリモビリの創業者だ。同社は外国系のロシア企業で、主要事業はロシア国内に集中している。

(欧州課)

(ロシア、イタリア)

ビジネス短信 e50d5184c932f950