チリのフリーゾーン、ボリビア外貨規制で事業所の移転先に

(チリ、ボリビア、米国、中国、ペルー)

サンティアゴ発

2025年05月12日

チリ北部のイキケ・フリーゾーン(ZOFRI)の関係者は58日、ジェトロのインタビューに対し、イキケ市を経由して工業製品をボリビアに輸入している企業が、事業所をボリビア国内からイキケ市に移す事例が増えていることを明らかにした。背景にボリビア政府による外貨規制があるという。

また、米国による関税政策や中国海運大手が出資するペルーのチャンカイ港の開港(2024年11月18日記事参照)は、ZOFRIの運営にほぼ影響を与えないとの見方を示した。

ZOFRIのプリシラ・エスコバル商業施設営業部長によると、ZOFRI2025年で創設から50年を迎える。域内には2,150社が所在し、このうち57%が地場企業で、外国企業では中国企業の入居が最も多い。中国からは自動車、電化製品、繊維製品など多岐にわたる品目が運ばれており、日本からは中古車などが輸入されている。再輸出先(金額ベース)はボリビアが約50%で、次いでパラグアイが30%、ペルーが10%の順となっている。

最大の再輸出先であるボリビアについては、同国政府の外貨規制でボリビアの輸入企業がドル不足に直面したことで決済が困難となり、事業所の所在地をボリビアから、外貨決済に支障のないチリのイキケ市に移すケースが増えているという。エスコバル部長は、事業所をボリビアからイキケ市へ移す時間と手間がかかるものの、現在のところ、外貨決済が問題なくでき、ボリビア向け物流も維持できているとの認識を示した。その上で、今後もボリビアの外貨政策の動向は注視していく、と話した。

また、米国の関税政策についてZOFRIは、周辺国への再輸出が中心のため、直接的な影響はほぼないと考えているという。ペルーに所在する中国国営の海運大手、中国遠洋海運集団(COSCO)が60%出資するチャンカイ港については、イキケ市から離れており、今後チャンカイ港周辺のインフラ整備が進んでも、ZOFRIへの影響は限定的と見ていることを明らかにした。

ZOFRI物流センターのクリスティアン・モラ工場長は、いつ、どこからでも通関処理などの状況を把握できる電子可視化システム(SVE)や倉庫管理システム(WMS)の導入で、域内設立企業の利便性を高めている、と説明した。さらに、「今後、チリ、パラグアイ、アルゼンチン、ブラジルの物流インフラを結ぶ大陸横断回廊(注)の開発が進めば、近年、干ばつなどで運航に支障がでているパナマ運河を経由することなく、アジア市場と(特に大西洋側の)南米諸国を陸上輸送で結ぶことができる」と、イキケ市の地理的優位性を強調した。

写真 左からZOFRIのモラ工場長とエスコバル部長(ジェトロ撮影)

左からZOFRIのモラ工場長とエスコバル部長(ジェトロ撮影)

(注)太平洋側のチリ、大西洋側のブラジルを、パラグアイとボリビアを経由して結ぶ物流ルート。

(石井美和子、石田達也)

(チリ、ボリビア、米国、中国、ペルー)

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