イーレックス、ベトナム初の商用バイオマス発電所を稼働

(ベトナム)

ホーチミン発

2025年05月08日

再生可能エネルギーを主軸にした電力事業を行うイーレックスは4月25日、ベトナム南部ハウザン省でバイオマス発電所の竣工(しゅんこう)式を開催し、ドン・バン・タン・ハウザン省共産党委員会書記など、地方省の関係者や企業関係者らが参加した。同社の海外第1号となるバイオマス発電所で、ベトナムにとっても初の商用バイオマス発電所の建設は、2022年12月から事業会社Hau Giang Bioenergy Joint Stock Company(注1)の下で進めた。発電出力は20メガワット(MW)で、2基の発電ユニットで構成される。同省ロンミー変電所まで6.3キロの送電線で国家送電網に接続され、年間発電量は一般家庭約9万3,000世帯分に相当する。また同発電所は、環境省の2022(令和4)年度の2国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism:JCM)資金支援事業のうち、設備補助事業(注2)に採択された事業だ。ベトナムの固定価格買い取り制度(FIT)の適用を受け、1キロワット時(kWh)当たり8.47セントで販売する。燃料は100%もみ殻で、年間約13万トンを使用する。

竣工式で、イーレックスの本名均・代表取締役社長は「ベトナムは経済成長が著しく、電力需要が毎年10%程度増加している。一方、ベトナムは2050年までに温室効果ガス(GHG)のネット排出ゼロを達成することを宣言しており、エネルギーの安定供給と脱炭素の両立が求められる。バイオマスエネルギーを活用した脱炭素の実現・エネルギー自給率の向上、雇用増大・所得向上に向けて貢献したい」と述べた。

同社は2025年3月からベトナム北部トゥエンクアン省で、丸太・木質残渣(ざんさ)などを使用し、FSC認証(注3)を受けた木質ペレットの製造を開始している。同燃料は年間の生産能力が15万トンで、日本をはじめ国外に輸出販売している。また、2024年10月に北部イエンバイ省、トゥエンクアン省でもバイオマス発電所の建設を開始しており、2027年の完成を目指している。

同社はベトナム国内で2035年までに、新設で18カ所のバイオマス発電所の建設を計画しており、既設の石炭火力発電所6カ所では、バイオマス燃料の混焼による発電事業が検討されている。また、カンボジアでも水力発電所開発や、同社グループのバイオマス(50MW)、太陽光(40MW)を含む23の発電投資プロジェクトが2024年9月に閣僚会議で承認され、ASEANでの事業拡大が進んでいる。

写真 バイオマス発電所の外観(ジェトロ撮影)

バイオマス発電所の外観(ジェトロ撮影)

写真 イーレックスの本名均・代表取締役社長による竣工式のスピーチ(ジェトロ撮影)

イーレックスの本名均・代表取締役社長による竣工式のスピーチ(ジェトロ撮影)

写真 竣工式の様子(ジェトロ撮影)

竣工式の様子(ジェトロ撮影)

(注1)同事業会社には、イーレックスが51%、Power Engineering Consulting Joint Stock Company 2(ベトナム電力公社の100%子会社、PECC2)が10%、Son My Renewable Energy Joint Stock Companyが19%、Ninh Thuan Agriculture & Renewable Energy Joint Stock Companyが9%、その他燃料供給会社が11%出資している。4月24日付でイーレックスとPECC2は業務提携契約を締結。

(注2)優れた脱炭素技術などを活用し、途上国などにおける温室効果ガス排出量を削減する事業を実施し、測定・報告・検証(MRV)を行う事業。途上国などにおける温室効果ガスの削減とともに、JCMを通じてわが国およびパートナー国の温室効果ガスの排出削減目標の達成に資することを目的とする。優れた脱炭素技術などに対する初期投資費用の2分の1を上限として補助を行う。なお、本事業はベトナム政府と日本政府の協力の下で実施されている。

(注3)森林の環境保全に配慮し、地域社会の利益にかない、経済的にも継続可能なかたちで生産された木材に対して与えられる、国際的な認証制度。

(新田和葉)

(ベトナム)

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