温室効果ガス削減へ、国連目標に基づくロードマップを新たに策定
(マレーシア)
クアラルンプール発
2025年05月23日
マレーシア天然資源・環境持続可能性省は5月20日、温室効果ガス(GHG)排出量の削減に関し、国が決定する貢献(NDC)の達成に向けたロードマップと行動計画をまとめたと発表した(同省プレスリリース、マレー語のみ)。同時に、2050年までに排出量を実質ゼロにするための長期低排出発展戦略(LT-LEDS)も策定した。
今回発表した140ページ超から成るNDCロードマップと行動計画(NDC RAP)は、パリ協定に基づくマレーシアのNDCを実現し、2030年までのGHG削減目標を達成するための具体的な行動計画と政策の方向性を定めたものだ。同国がNDC実施に関して初めて策定した包括的な戦略文書と位置付けられる。エネルギー分野のみならず、全てのセクターに適用され、太陽光やバイオマスなど再生可能エネルギーの拡大、エネルギー効率の向上、森林保全と植林、電動車導入など、持続可能な輸送、廃棄物管理の改善を柱として挙げた。国内外での資金調達、技術移転、能力開発などを通じて、定期的なモニタリングを行いつつ、各省庁と民間セクターとで連携し、目標達成に取り組む。
NDC RAPが戦略や実行計画と位置付けられるのに対し、これまでの取り組み結果の報告として、同省は5月初旬、国連気候変動枠組み条約に基づく第1回隔年報告書を発表した。この中でLT-LEDSを間もなく国連に提出する考えを示していた。LT-LEDSの策定は、2国間クレジット制度(JCM)の制度的整合性を担保する重要な要素とされる(2月5日開催「マレーシアにおけるJCM支援スキーム活用セミナー
」)。LT-LEDS策定が実質的な前提条件と解され、JCM締結に向けた環境が整ったとみられる。
ニック・ナズミ天然資源・環境持続可能性相によると、NDC RAPとLT-LEDSはいずれも「生きた文書」で、マレーシアおよび国際的な気候変動に関する動向や方向性に基づき、適宜改定していく。同省はマレーシアでの低炭素で気候変動に強い開発を推進するための包括的な指針として、これら両文書を位置付けたい考えだ。
(吾郷伊都子)
(マレーシア)
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