最高裁がシンベト長官の解任を「違法」と判断も、ネタニヤフ首相は後任を指名

(イスラエル)

テルアビブ発

2025年05月26日

イスラエル最高裁判所は5月21日、イスラエル総保安庁(シンベト)のロネン・バー長官の解任を「違法」とする判決を下した。「タイムズ・オブ・イスラエル」紙電子版(5月21日)によると、最高裁は、ネタニヤフ政権が2025年3月に行ったバー長官の解任(2025年3月24日記事参照)について、手続き上の瑕疵(かし)があったと指摘、イツハク・アミット裁判長は、バー長官が解任前に適切な審理を受けられず、解任の理由が明確に示されていなかったと述べた。さらに、提示された証拠も不十分だったと判断された。また、シンベトによるベンヤミン・ネタニヤフ首相の側近への捜査が進行中であることから、解任に関して「利害関係がある」との見解も示された。

「Yネット・ニュース・ドットコム」(5月21日)によると、最高裁の判決を受けて、ガリ・バハラブ・ミアラ検事総長は同日、「シンベト新長官任命に関する手続きが適切に行われるよう法的な指示が出るまで、(ネタニヤフ首相は)いかなる行動も控えなければならない」と通告した。

しかし、検事総長の通告にもかかわらず、ネタニヤフ首相は5月22日、シンベトの次期長官にデビッド・ジニ少将を指名すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。イスラエル首相府によると、ジニ少将は、イスラエル国防軍(IDF)の多くの作戦上の地位や指揮官を歴任してきた人物という。

この動きに対し、アイザック・ヘルツォーク大統領は5月25日、「最高裁の判決を無視することを考えるべきではない」と警告した。さらに、「裁判所の判決および法の指示を無視することは、イスラエルの民主主義や国民の結束、さらには国家の主権をも損なう」と述べ、「法の支配は、ユダヤ国家かつ民主国家であるイスラエルにとって、単なる提言ではなく存在基盤そのものだ」と強調した(「タイムズ・オブ・イスラエル」紙電子版(5月25日))。

イスラエルとハマスの衝突の詳細についてはジェトロの特集を参照。

(中溝丘、イバン・ステシェンコ)

(イスラエル)

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