国内産業保護を目的とした推定価格対象品目を拡大、家具や玩具も対象に

(メキシコ)

調査部米州課

2025年05月29日

メキシコ政府は5月12日、「大蔵公債省による推定価格の対象品目についての納税を保証するメカニズムを定める決議」の別添5を連邦官報で公布し、26日付官報で対象品目を追加した。推定価格とは、国内外での調査に基づき、市場の競争環境や生産コストの動向などを考慮して、大蔵公債省が妥当と考える参照価格のことだ。税関法第84-A条と上記決議に基づき、同推定価格を下回る価格でメキシコに対象商品を確定輸入する場合は、税関が指定した金融機関の口座に保証金を入金する必要がある。保証金額は、推定価格を課税ベースとして計算した関税や、付加価値税(IVA)などの輸入関連租税公課と、輸入申告価格を基準に計算した租税公課の差額となる。預けられた保証金は、当局による税務調査が開始されない限り、輸入通関の6カ月後に回収する(引き出す)ことができる。

従来は中古車(別添2)、履物(別添3)、繊維・縫製品(別添4)が対象だったが、今回の一連の官報に基づき、別添5として家具と玩具を追加した。日本からの輸入はそれほど多くないが、2024年には照明器具(HS9405.42.91)などの輸入実績がある。別添5の対象品目については、添付資料表を参照。

推定価格の対象品目でも、2025年の貿易細則(RGCE2025)の第1.6.29則V.に基づき、日本メキシコ経済連携協定(日墨EPA)や環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)などの自由貿易協定(FTA)を活用して無関税で輸入する場合は、通関士が輸入申告書に特定の識別コード(注1)を入力することにより、保証金の入金なしで輸入通関が可能だ。なお、推定価格以上の輸入申告ならば保証金は必要ないが、当該商品のHSコードが推定価格の対象の場合は、通関士が推定価格以上であることを示す識別コード(注2)を入力しないと輸入通関できないため、注意が必要だ。

トランプ関税を契機とした中国などからの輸入急増を警戒

メキシコのシェインバウム現政権下では、鉄鋼・同製品や繊維製品など、国内産品と輸入品が競合するいわゆるセンシティブ品目に対する輸入規制が強化される方向にある。鉄鋼の輸入に際して必要となる自動輸入通知(2024年4月17日記事参照)の審査が厳格化され、繊維製品や履物の一般関税率が引き上げられている(2024年12月25日記事参照)。今回の措置は、米国の第2次トランプ政権下で中国製品などに高関税が課され、米国に代わる市場を求めた安価な産品がメキシコ市場に流入することを警戒する国内産業界の声に応えるものとして、マルセロ・エブラル経済相が5月5日の記者会見で計画を発表していた。同会見録外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、家具や玩具に続き、レジャー・スポーツ用品について6月16日、紙製品については7月16日に推定価格が発表されることになっている。

(注1)輸入申告書の商品情報入力欄(Nivel Partida)に「EX」の識別コードを入力し、補完コード1(Complemento 1)に「30」を入力する必要がある。

(注2)輸入申告書の商品情報入力欄(Nivel Partida)に「EX」の識別コードを入力し、補完コード1(Complemento1)に「33」(別添5対象品目の場合)を入力する必要がある。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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