米エネルギー省、FTA非締結国へのLNG輸出再開を支持する調査結果発表

(米国)

ニューヨーク発

2025年05月23日

米国エネルギー省(DOE)は5月19日、液化天然ガス(LNG)の輸出は米国の公共の利益に合致するとの調査結果を発表し、自由貿易協定(FTA)非締結国に対するLNGの輸出許可の発給を今後再開する見込みだと明らかにした。

米国では天然ガス法(NGA)の下、LNG輸出には「公共の利益」が必要とされる。米国がFTAを締結している国への輸出は公共の利益があるとみなされるが、FTA非締結国に対してはDOEなどによる審査が行われる。DOEはバイデン前政権下の2024年1月に、天然ガス産業は過去10年間で変容し、安全保障や環境への配慮などを含めて審査内容を更新する必要があるとして、LNGのFTA非締結国向け輸出許可の発給を一時的に停止すると発表した(2024年1月30日記事参照)。これに対し、環境団体などは賛成する一方、共和党議員を中心に反対する意見も一定程度あり、ルイジアナ州の連邦地方裁判所は2024年7月、16州の司法長官(共和党)による訴えを認めるかたちで、DOEに審査再開を命じた。DOEはその後、米国エネルギーインフラ企業のニュー・フォートレス・エナジーにFTA非締結国向けのLNG輸出許可を出している(2024年9月5日記事参照)。こうした状況を踏まえ、DOEはバイデン前政権終了直前の2024年12月に、米国のLNG輸出が経済や環境に与える影響を評価する調査外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを開始し、3月20日までパブリックコメントを募集していた。

この調査でDOEは今回、米国からのLNG輸出に関し、(1)米国は国内価格への影響を最小限に抑えながら、輸出拡大に対応可能な十分な天然ガス供給量を有している、(2)GDPと雇用の拡大、貿易収支の改善をもたらす、(3)世界の温室効果ガス(GHG)排出量に目立った影響を与えることなく、米国と国際的な安全保障を強化することから、「米国民の利益に合致するとの主張を支持する」と結論付けた。その上で、LNGのFTA非締結国への輸出手続きを再開すると明らかにした。

DOEのクリス・ライト長官は声明で「事実は明確だ。米国のLNG輸出の拡大は、米国民と世界にとって利益となる。本日、DOEは事実に従い、バイデン政権の失敗した政策の扉を閉じ、米国のエネルギーの未来をより強固な基盤に置く措置を講じた」と述べた。ドナルド・トランプ大統領も就任初日の1月20日に、エネルギー分野での規制緩和と併せて、LNGの輸出再開を促す大統領令を発表していた(2025年1月22日記事参照)。

(赤平大寿)

(米国)

ビジネス短信 c369673a4d2e31f1