欧州委、グリーン水素の域内需要創出に向けた「水素銀行」の第2回応札結果を発表
(EU)
ブリュッセル発
2025年05月29日
欧州委員会は5月20日、「欧州水素銀行」の第2回競争入札(2024年12月10日記事参照)の結果を発表した(プレスリリース)。応札のあった欧州経済領域(EEA、注1)11カ国の61事業から、5カ国に所在する15事業が選定された。10年間で合計220万トンのグリーン水素の生産、1,500万トンの二酸化炭素(CO2)排出削減が期待されている。財政支援の総額は9億9,200万ユーロ規模となった。
選定された15事業のうち、海運分野を除く12事業の入札価格は、グリーン水素1キログラム(kg)当たり0.20ユーロ(スペイン所在事業)から0.60ユーロ(オランダ所在事業)で、大半が前回入札と同様、0.5ユーロ以下だった。所在地別では、前回に続いて選定されたスペイン(8事業)、フィンランド(1事業)に加え、新たにドイツの2事業、オランダの1事業が加わった。グリーン水素は、輸送分野、化学産業、またはメタノールやアンモニアの製造で生産される。
今回初めて、海運分野のオフテイカー事業として3件が選定された。所在地はいずれもノルウェーで、入札価格は0.45~1.88ユーロ/kg、財政支援額は2億ユーロの割当に対し、9,670万ユーロだった。15の各事業に対し、10年間の生産予定量(12~411キロトン)に応じ、800万~2億4,600万ユーロのプレミアム(奨励金)の支払いが見込まれる。
欧州の水素利用を促進する業界団体ハイドロジェン・ヨーロッパ(Hydrogen Europe)によると、選定された全15事業の最終投資決定(FID)がなされれば(注2)、FIDの規模は、現在の2.7ギガワット(GW)から5GWに倍増する。今回の応札結果は、前回の初回の価格範囲を立証し、オフテイカー側にも価格上昇負担を期待するかたちだ。ドイツとオランダの事業が最大規模で、規模の経済と産業側の需要に応えるものだとコメントした。
オランダ・ロッテルダムで5月20日~22日に開催された「World Hydrogen Summit」で、欧州委のエネルギー総局の担当者は、欧州水素銀行の競争入札は、グリーン水素の需要拡大に寄与していると話した。生産コストと市場価格の差を補助金で補うことで、再生可能エネルギー電力に由来するグリーン水素の利用を促進する。脱炭素化が難しい産業の化石燃料利用を軽減し、欧州のエネルギー安全保障にもつながるとした。第3回となる入札は、クリーン産業ディール(2025年3月4日記事の添付資料参照)で発表のとおり、10億ユーロ規模で、2025年末に予定しており、グリーン水素の需要をさらに促すとした。
(注1)EU加盟国とノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン。
(注2)第1回競争入札の結果で選定された7事業(2024年5月8日記事参照)のうち、1事業は契約締結に至らなかった。
(薮中愛子)
(EU)
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