衣類のエコスコア表示規制案が欧州委員会により承認
(フランス、EU、モロッコ)
パリ発
2025年05月27日
フランスのアニエス・パニエ=リュナシェ・エコロジー転換・生物多様性・森林・海洋・漁業相は5月16日、衣類のエコスコアに関するフランス独自の規制案が5月15日に欧州委員会によって承認(注1)されたと発表(フランス語)した。
「環境コスト」と名付けたエコスコアは、任意表示とする。温室効果ガスの排出、生物多様性への損害、水や資源の消費、汚染の影響などEU製品環境フットプリント(PEF)の16の基準に、マイクロファイバーの放出、回収された古着の欧州外への輸出などフランス独自の基準を追加した。ポイントが低いほど、環境負荷が低い製品となる。
人と環境を尊重するファッションを推進する独立組織のクリア・ファッションによると、フランスのブランド「1083」がフランス国内で製造したオーガニックコットン製ジーンズの環境コストのポイントが1,125であるのに対し、あるファストファッション企業製造の平均的なジーンズは4,435ポイント。モロッコで製造したフランスの「プチバトー」のオーガニックコットン製Tシャツは443ポイントであるのに対し、あるファストファッション企業製造の平均的なTシャツは1,005ポイント(注2)。
「環境コスト」のラベル例(出所:繊維衣料品の環境コストの計算方法および表示に関する省令案)
エコスコアの導入は、2021年8月公布の気候変動対策・レジリエンス強化法(フランス語)(2021年12月6日付地域・分析レポート参照)で定められた。同法第2条により、エコスコアは消費者に対し、「信頼性が高く、かつ、理解しやすい方法」で、対象となる商品およびサービスの「ライフサイクル全体にわたる環境への影響」について知らせるものとしている。
フランス政府は、2024年末のパブリックコメント(フランス語)を経て、欧州委に施行令(デクレ)案
および省令(アレテ)案
を通知していた。欧州委員会の承認を受け、国務院の諮問を経て、2025年中に環境コストの任意表示規制の施行が可能となる見込みだ。
パニエ=リュナシェ氏は、「衣類の環境コスト表示の施行はフランスの勝利だ。消費者が製品の環境への影響を把握できるようになり、持続可能な製品の生産者が有利になる。政府にとっては、フランスや欧州よりはるかに緩い条件で生産するウルトラファストファッションが環境、経済、社会に及ぼす壊滅的な影響を軽減するための効果的な手段となる。繊維産業は世界で最も環境汚染を引き起こす産業の1つ。われわれは汚染を減らし、消費者と雇用を守るために行動している。6月に審議予定のファストファッション規制法案も同様の方向に向かうものだ」とした。フランスにおけるアパレルブランドのサステナビリティー動向については調査レポートを参照のこと。
(注1)欧州単一市場指令に基づく。EU単一市場で新たな貿易障壁の創出を避けることを目的として、技術的規則は草案の段階で欧州委員会に通知する。欧州委員会の同意を得ることなく各国の議会で国内規定が可決されることを防ぐ仕組み。
(注2)ファストファッション企業製造のジーンズとTシャツは製造後に空輸する製品。「プチバトー」のTシャツは製造後に空輸しない製品。
(奥山直子)
(フランス、EU、モロッコ)
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